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2003/2/22 update

 宇都宮 養育里親傷害致死事件
平成14年11月3日

※宇都宮で養育里親が自宅にお預かりした子ども(3歳)を殴り殺すという悲しい事件が起きました。
親が育てられない子どもを我が子同然に育てる里親として、絶対に起きてはならない事件です。
この事件の経過を追って行きたいと考えています。二度と同じ事が繰り返されないためにも・・・。
亡くなった順子ちゃんの冥福を祈ります。

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2003/02/06 毎日新聞ニュース
<里子虐待死>起訴事実認めるが心神耗弱主張−宇都宮地裁初公判

 里子の女児を殴って死なせた傷害致死罪に問われた宇都宮市日の出の主婦、李永心被告(43)の初公判が6日、宇都宮地裁(飯渕進裁判長)であり、李被告は起訴事実を全面的に認めた。李被告の弁護人は「慣れない育児や日本での生活などによるストレスで事件当時、心神耗弱状態だった」と主張した。
 検察側の冒頭陳述によると、李被告は子供がいなかったことから、00年に栃木県に里親登録し、02年7月に大沼順子ちゃん(当時3歳)を里子として預かった。しかし、預かった当初からよく泣いたため、孫の手を使ってぶつようになった。児童福祉司が自宅を訪問した直後の同年11月1日夜、児童福祉司に順子ちゃんへの暴力が分かってしまうのではないかという緊張から疲労を感じ、同月3日未明まで、頭を壁や床に打ち付けるなどして急性硬膜下血腫(脳内出血の一種)で死なせた。【川端智子】

2002/12/16 朝日新聞  →PDFファイル
里親サポートもっと−女児虐待死で緊急集会 
幼い心のケア難しく「研修や休息足りぬ」


 宇部宮市の女性(43)が11月、里子の女の子(3)を殴って死なせた事件を受け、東京都養育家庭連絡会と里子・里親の支援団体「アン基金プロジェクト」が8日、都内で緊急集会を開いた。全国から集まった100人を超す里親らは「この里親だけの問題ではない」と、里子を育てる難しさやサポート体制の不十分さを訴えた。
 栃木県年中央児童相談所によると、女性は5年ほど前、韓国から来日した。夫は日本人で実子はいない。韓国の幼稚園で9年間教えた経験があり、昨年12月に男の子(4)を預かった後、児童相談所の勧めで今年7月、その妹も預かった。亡くなった妹の体には、あざなど虐待の跡が多数あったが、兄には虐待の形跡がなかったという。
 事件の2日前、児童相談所の担当職員が家庭訪問したが、異変はうかがえなかったという。妹が来てからの家庭訪問は2回だけ。女性は言葉の壁のため身近に相談相手がいなかった上、夫の帰宅は遅く、1人で育児を背負っていたという。
 集会では、東京福祉大のヘネシー澄子教授が基調講演。虐待されなかった兄は1歳まで実母に育てられたが、妹は生後すぐに乳児院に預けられたことに触れ、「1歳までが人との信頼関係を築く土台となる時期。交代勤務で保育する乳児院では、どんなに手厚くケアしても愛情が不足しがちだ。事件の背景に、養育者と愛着形成ができない『愛着障害』がある可能性がある」と指摘した。
 「特定の人と一対一の関係を結べず、里親に攻撃的になるなどの行動をとってしまうのが愛着障害。目と目を合わせて抱きしめ、愛情を伝えていけば、改善するが、こういうことを知らなければ関係は悪化してしまう」と説明した。
 会場からは「私も愛着障害を知らずに里子を預かり、大変だった。こうした問題行動の背景について、幼稚園の先生など教育現場の人たちにも知って欲しい」という声があがった。
 東京都児童相談センター養育家庭支援担当課長の石川守さんは、「都も一対一の愛着関係を結べるよう、施設養護から家庭養護への転換を図っているところ」と説明した。都では現在、親が育てられない子どものうち数%しか里親に預けられていないが、これを2割から3割に拡大する方針。「実親の承諾が必要という課題はあるが、長期委託が見込まれる乳幼児はなるべく早く里親に預け、我々も支えていきたい」
 里親への支援体制の不備を指摘する意見もあった。
 「子どもの虐待防止センター」の広岡智子理事は、「何よりも必要なのは休息、仲間、助言者なのに、支援体制ができていない。『少し子どもと離れて休んでごらん』と言える体制づくりが必要」と指摘した。
 18年間、里親をしてきた東京都八王子市の坂本洋子さんも、「私が里親をやってこられたのも、大変だったときに『つらいよね』と共感してくれる仲間がいたから」といい、この事件を受けて、里親同士が気軽に話ができるサロンを近く自宅で開く計画を語った。
 国は今年、主に虐待を受けた子どもを預かる「専門里親」制度を新設し、研修を充実させるなど、里親支援の強化を打ち出したばかりだ。集会では定期的な研修の義務づけや、愛着障害を防ぐためにも乳児は原則として施設ではなく里親委託とすることなどを盛り込んだ緊急要望書を採択、近く坂口厚労相に出す。

[写真]
問題点を指摘するパネリスト。会場からも支援不足を訴える声が相次いだ=東京都中野区で

2002/12/12 共同通信ニュース速報
里親の支援制度充実を 子育ての難しさ浮き彫り

 宇都宮市で里子として預けられていた三歳の女児が、里親で韓国籍の李永心被告(43)に暴行を受け死亡してから約一カ月。傷害致死罪で起訴された李被告は「泣きやまないので腹が立った」と供述、殴ったことを認めた。
 「子育ての専門家」とみられがちな里親が、子育ての悩みを相談することもできずに孤立した結果の事件だった。里親による子育ての難しさを浮き彫りにしたこの事件をきっかけに、支援体制の充実を求める里親の声が大きくなっている。
 里親制度は、親がいなかったり育児放棄した場合に都道府県が子育てを委託する。厚生労働省によると、二○○一年度で七千三百七十二世帯が里親登録、うち千七百二十九世帯が二千二百十一人の子どもを預かった。児童虐待の急増で、乳児院などの施設で生活する子どもの一割にも満たない。
 李被告と日本人の夫が栃木県中央児童相談所に里親登録したのは二○○○年二月。韓国で九年間幼稚園教諭をしており、相談所は「養育に向いている」と判断した。李被告夫婦は昨年十二月に兄(4つ)を預かり、今年七月には女児を迎えた。将来は兄妹を養子にする意向だった。
 十一月一日に委託後初の家庭訪問をした児童福祉司に、李被告は「甘えが出てよく泣くようになった」と訴えたが、福祉司は「慣れてきた証拠。受け止めてあげて」とアドバイス。異変は感じ取れなかったという。事件は二日後に起きた。
 李被告は日本語が上手でなく、難しい話は夫が通訳。近所付き合いは少なく、研修や里親交流会にも参加していなかったようだ。夫は「早く気付いていれば」と悔やんでいるという。
 事件を受けて栃木県は、子どもを預かっている県内の里親五十八世帯に聞き取り調査を実施。「里親という立場の特殊性を理解した相談体制の整備」「同じ里親という立場で気軽に相談できるような場」などサポートを求める声が多いことが分かった。
 今月八日には、里親でつくる「東京都養育家庭連絡会」が緊急集会を開き、@里親研修の充実や受講の義務付けA児童相談所の強化など支援体制の充実B一時的に子どもを別の里親や施設に預けて里親が解放される仕組みの充実―などを盛り込んだ要望書をまとめた。
 児童虐待の急増で、乳児院や児童自立支援施設は満杯状態。厚生労働省は虐待を受けた子どもを預かる「専門里親」を新設するなど大幅な制度改革を十月から始めている。
 唐沢剛家庭福祉課長は「虐待された子どもが増えており、里親は大変だ。施設で一時的に里子を預かるなどバックアップ体制を充実したい」としている。制度充実の方策を検討する研究会も先月末スタートした。改革は始まったばかりだ。(了)
2002/12/11 毎日新聞 地方版/栃木
[新教育の森]里子傷害致死事件で緊急集会−−委託後の支援求める声/栃木

 先月3日、宇都宮市内で里子の大沼順子ちゃん(3)を殴って死亡させた傷害致死の罪で里親の主婦、李永心被告(43)が起訴された事件を受け、緊急集会「子どもへの虐待をなくすために、私たちに何ができるか」がこのほど、宇都宮大学(同市峰町)で開催された。基調講演のほか、里親や児童福祉司などによるシンポジウムが開かれ、行政や社会からのサポートを求める生の声が寄せられた。【川端智子】

 ◇里親や児童福祉関係者ら「相談できる態勢作りを」

 緊急集会には、県内の里親、児童福祉関係者、大学生など約110人のほか、広岡智子・子どもの虐待防止センター理事や水島広子・衆院議員らが出席。冒頭では順子ちゃんに対する黙とうが捧げられた。

 シンポジウムには、現役の里親のほか、県北児童相談所判定指導課長で児童福祉司の秋場博さん、真岡市内の児童養護施設「あかつき寮」の曽根俊彦さんが、パネリストとして出席。「被虐待児への援助の現状と課題」というテーマで話し合われた。

 パネリストの里親は「施設などで保護された子どもの多くは、親との別離などの経験で、精神的に問題を抱えているケースが少なくない」と指摘。自身の里子と衝突した経験から、「児童相談所はそのような現状を把握せず、預かった後のフォローはほとんどなかった。サポートがあれば、順子ちゃんは死ななくても良かったはずだ」と訴えた。

 これに対し、秋場さんは、里親に委託される被保護児童が全体の1%程度にとどまっている現実を挙げ、「里親に委託されれば幸運と考え、その先にある里親への支援という考えが欠けていたと思う」と話した。

 曽根さんは、夜間宿直の職員が1人で、39人の子供を見なくてはならない施設の現状を説明。「個人より集団が重視される施設では、子供たちに家庭や親の機能を与えることはできない」と述べ、里親制度の充実と児童福祉施設の基準の改善の必要性を訴えた。

 シンポジウムに先立って行われた基調講演では、広岡理事は「里親だからといって、すべてを背負うことはない。悩みを社会やグループで気軽に相談できる態勢が必要」と話した。精神科医でもある水島氏も「精神医療の世界では、同じような悩みを持つ人が集まり、話し合うことで問題を解決していく治療方法が確立されつつある。子育てや里親にも、そのような態勢が必要ではないか」とアドバイスした。

■写真説明 ほぼ満席の会場には、里親や児童福祉関係者の本音や質問が寄せられた
2002/12/08 下野新聞 朝刊
里子虐待死で緊急集会 支援体制充実求める声も 宇都宮

 宇都宮市の大沼順子ちゃん(三つ)が里母に殴られ死亡した事件を受けて、緊急集会「子どもへの虐待をなくすために、私たちに何ができるか」のシンポジウムなどが七日、同市峰町の宇都宮大で開かれた。
 県内の里親や児童養護施設職員、大学生ら約百十人が参加し、サポート体制の充実を求める声が相次いだ。冒頭、亡くなった順子ちゃんに、全員が黙祷を(もくとう)をささげた。席上、パネリストの児童相談所職員が{登録する里親が少ない中で、委託先が見つかった子どもは幸運と考えていた。そこには里親支援の視点はなかった}と話すと、里親の一人が「児童相談所は里親に頼り過ぎ。今の体制では良いサポートは無理だ」と批反する場面も見られた。
 シンポジウムに先立ち行なわれた講演会では、都内の社会福祉法人「子どもの虐待防止センター」の理事が「『里親だから』という理由で、家族だけで責任を取るなんて考えなくていい。同じ世代を育てる里親を集め、悩みを言いやすい環境をつくりたい」と話した。
 この事件をめぐっては、東京都養育里親連絡会なども八日午後一時から東京・JR中野駅そばの「なかのZERO」で緊急集会を開く。問い合わせは同会、電話080・3127・9478(携帯)。
2002/12/03 朝日新聞 東京地方版/栃木
県里親連合会会長 狐塚博成さん 子育て、地域ぐるみで(この人この話) /栃木

 宇都宮市で、里親の母親が里子を殴って死なせた事件から1カ月。県里親連合会の狐塚博成会長(62)=写真=は、今も割り切れない気持ちでいる。

 「あの事件以降、ニュースで子ども虐待事件を見るとビクッとする。今もあの事件は信じられない」

 県内の里親たちで作る連合会は、会報の発行やキャンプなどレクリエーション活動を続ける。年6回程度の研修も開き、里親の資質向上を図ってきた。

 「外国から来て言葉の問題もあったのか、近所づきあいもなかったようだ。家で悩みを抱え込んでしまったのか。母親に幼稚園教諭の経験があったとはいえ、短期間で里子2人を引き受けて重圧になったのかもしれない」

 事件を起こした母親は、会の活動には参加しておらず、狐塚さんも彼女は知らなかったという。里親同士の連絡が取りにくい実情もうち明ける。「会員に会員名簿は配っていない。名簿が流出した際の悪用を恐れるためだ。里親がいかに世間の冷たい目を恐れているかわかりますか」と言った。

 将来の養子縁組を期待し里子を引き取る里親には、「里親・里子」の言葉を避け、会に参加しない人もいるという。彼らの存在は里親の間ではわからず、県だけが知る。「孤立の可能性は増すが、社会の偏見がある以上参加しない里親の気持ちもわかる」。里子2人を育てた狐塚さんの思いは複雑だ。

 今も社会の目は変わったとは言えない。里親制度の認知を広げ、里親が行政や地域ともっとかかわれる仕組みが必要だと考えている。「里子、実子を問わず、子育ては地域ぐるみでするものでしょう。事件を無駄にせず、里親として声をあげていきたい」
2002/11/26 朝日新聞 東京朝刊
里親制度 研修や支援を議論、改善を (私の視点)

 今年10月の里親月間は近年にない盛り上がりを見せた。だが、それを一気に冷やす出来事が宇都宮市で起きた。3歳の女児を里親が虐待死させた事件である。
 私は20年近く養育専任の里親をしてきた。その一人としてこの子に申し訳なく思う。里親選びの審査は十分だったか。子を預けた後の支援はどうだったか。次々と疑問がわいてくる。
 私たち里親経験者からなる市民グループは、9月下旬に児童虐待対策の先進国である米国を視察した。虐待防止と里親制度とは一見関係ないように見えるが、虐待を理由に親と子が分離されると、子どもの安全な生活場所として、養護施設か里親家庭が指定されるのである。
 2年前の児童虐待防止法の制定以来、里親制度に注目が集まっている。虐待を受けた子どもを育てるのは簡単でなく、一人一人に丁寧に向き合える環境が求められるからだ。
 里親たち自身の間でも意識変化が起きている。子どもの権利条約などの影響もあり、この制度は子どもの人生を応援する、公的役割を担った社会的な養護なのだと、各地で多くの人が気づき始めた。
 だがこれまで、里親制度はボランティア精神に富む一部の人の手に委ねられたまま、いわば社会の片隅で細々と営まれてきた。本来、大きな責任を担っている里親への研修や支援が議論されることはほとんどなかった。それが今回の悲劇の背景にあると思う。
 里親制度を本当に子どもの役に立つよう改善していくために、何をしたら良いのか。私たちの学習体験から6点提案したい。

(1)年齢や家の広さ、年収など物理的条件に傾きがちな里親登録時の審査を見直し、候補者の適性を見極められる工夫をする。周囲の人の評価を取り入れるなどの方法も有効だろう。
(2)里親候補者に、既に子どもを迎え入れている里親宅でボランテイア活動をするなど、事前に経験を積む機会を設ける。
(3)登録後も、子どもを委託した後も、里親としての力量を高めていく研修を続けて実施する。
(4)子どものためのソーシャルワーカーはもちろん、里親専任のソーシャルワーカーを置く。今でも児童相談所の福祉司が相談相手になってくれるが、専任でなく、また里親・里子を同一人物が担当するため、里親に寄り添うサポートができていない。
(5)そのためにも「虐待ケアセンター」(仮称)を作る。ソーシャルワーカーや医師、弁護士などの専門家が常駐し、いつでも相談に乗ってくれる拠点とする。
(6)里親のレスパイト(一時的な休息)制度を設ける。障害児を持つ親たちの間では既に行われている。

 以上のうち、研修とレスパイトには、厚生労働省も今春から取り組み始めた。その矢先に冒頭の事件が起き、「もっと早く手をつけていれば」と思わずにいられない。ほかにも、実の親をケアするプログラムの実践や、見えにくい心理的・性的虐待の判断方法の確立など、しなければならないことは山ほどある。
 事件を機に社会全体でこの問題を考えてほしい。そして、里親が「子どもの人権を守っている」と誇りを持てる制度にしていきたい。

(里親子支援グループ「アン基金プロジェクト」事務局長)

2002/11/23 読売新聞 東京朝刊
悩み多い里親浮き彫り 宇都宮の虐待死受け、県が実態調査=栃木

◆実の親との関係や子供の情緒不安定

宇都宮市で大沼順子ちゃん(当時三歳)が、里親から虐待を受けて死亡した事件を受け、県が行った里親と里子の実態調査の結果が二十二日、まとまった。実の親でないことを伝える時期や実母との関係など、里親が様々な悩みを抱えていることが分かった。児童相談所にも積極的なかかわりを期待する一方で、一部には必要以上のかかわりを求めないとの意見もあり、複雑な里親の心境と相談所の対応の難しさが浮き彫りになった。

◆相談所へは厳しい意見も

県内には現在、五十八世帯の里親に、六十四人の子供が委託されている。調査は、児童相談所の児童福祉司が家庭訪問し、すべての里親と子供に面談した。

里親の意見の中では、「落ち着きがない」「乱暴な言動がある」「自虐的行為があって心配」など、就学前の子供に関して、情緒の不安定さを心配する意見が目立った。「実の親ではないと伝えていない。医療機関にかかった際、本名を言われるので悩んでいる」(小四里親)、「いつ伝えるべきか悩んでいる」(小二里親)などの悩みもあった。

「実母と面会させているが、今後が心配」(三歳里親)、「実母の干渉が恐ろしい」(小二里親)など実の親との関係について心配している人もいた。

児童相談所への要望では、里親同士が情報交換できる場を求める声が上がった。「密接にかかわってほしい」「定期的に訪問してほしい」などこれまで以上のかかわりを求める声がある一方、「必要以上にかかわってほしくない」「相談所の職員は専門性に欠けており、援助ができないなら、かかわらないでほしい」という厳しい意見もあった。

子供は六十四人中、三十三人が日常生活に問題はないと答えた。ただ、「人間関係がうまくいかず、学校でも友達ができにくい」(中二)、「今後、実母のところに行くことになるのかどうかわからない」(小五)という悩みや不安を抱える子供もいた。

調査結果は、県児童家庭課や児童相談所などが設置を予定する検討班で分析し、今後の対応に生かす。
2002/11/23 読売新聞 東京朝刊
宇都宮の里子虐待死 李容疑者を起訴=栃木

宇都宮市で大沼順子ちゃん(当時三歳)が、里親から虐待を受けて死亡した事件で、宇都宮地検は二十二日、宇都宮市日の出二、主婦李永心容疑者(43)を傷害致死の罪で、宇都宮地裁に起訴した。

起訴状によると、李容疑者は十一月一日から三日までの間、自宅で、里子の順子ちゃんの顔を殴り、頭を壁に打ちつけるなどした。順子ちゃんは三日午前二時ごろ、運ばれた病院で脳内出血で死亡した。

李容疑者は、順子ちゃんを預かった際、夫と「厳しくしつけていこう」と話し合ったという。調べに対し、「最初は軽くたたく程度だったが、泣きやまなかったり、わがままを言い出したりしてから、徐々に強くたたくようになった」と供述。「大変申し訳ないことをしてしまった」と、深く反省しているという。

県中央児童相談所によると、順子ちゃんが正式に里子として引き渡されたのは今年七月十二日。児童福祉司が、李容疑者宅を訪れたのは、引き渡す前の七月九日と事件二日前の十一月一日の二回だけだった。

十一月に訪問したときは、李容疑者が「最近わがままになってきた」と話していたが、順子ちゃんの表情などから虐待があったような雰囲気は感じられなかったという。
2002/11/23 毎日新聞 地方版/栃木
里子傷害致死 李永心容疑者を起訴−−宇都宮地検 /栃木

 宇都宮地検は22日、里子の女児(3)を殴って死なせた傷害致死の罪で、里親の宇都宮市日の出2、主婦、李永心容疑者(43)を宇都宮地裁へ起訴した。

 起訴状によると、李被告は、今月1日から3日の間、自宅で里子の大沼順子ちゃんの胸を右手で突いて転倒させ、後頭部を床にぶつけさせた。さらに顔を平手で殴り、頭を壁にぶつけさせるなどの暴行を加え、3日午前2時ごろ、宇都宮市内の病院で脳内出血で死なせた。【仙石恭】
2002/11/23 毎日新聞 地方版/栃木
里親特有の悩み、浮き彫りに−−実親との関係/養子縁組問題/告知の時期 /栃木

 県児童家庭課は22日、宇都宮市の里子傷害致死事件を受け、県内の里親家庭58世帯を対象に行った聞き取り調査の結果を発表した。里子64人中、ほぼ半数の31人の里子に対し、何らかの悩みがあると回答した。「落ち着きがない」「反抗的」など子育てに関する悩みのほか、実親との関係や里子への告知をめぐる悩みが目立った。今後、同課職員や児童福祉司で検討班を設置し、調査結果を詳しく分析する。【川端智子】

 ◇検討班設置へ−−県全世帯調査

 調査は今月6日から13日にかけて実施し、里親全世帯が回答した。養育上の悩みでは、「反抗的」、「落ち着きがない」「乱暴な言動がある」など一般的な子育てに通じる悩みがある一方、「自虐行為がある」「不登校」など深刻な声も寄せられた。また、「実親との関係」「養子縁組に関する悩み」「告知の時期」など、里親特有の悩みも寄せられた。

 児童相談所に対しては、「里親という立場の特殊性を理解した相談体制の整備」などサポートの充実を求める意見が6件あったほか、「(児童福祉法で対象外となる)18歳以上の里子にもフォローが必要」という現行制度への不満も出た。

 里子自身の回答は8人。「学校も家庭も楽しい」(中学生)、「希望大学に合格し、喜んでいる」(高校生)という声の一方、「学校がつまらなく、お金にも困っている」(高校生)、「今後、実母の所にいくかどうか分からない」(小学生)、「人間関係がうまくいかず、学校でも友だちができにくい」(中学生)などの悩みもみられた。

 児童家庭課は「里親の多くは一般的な子育ての悩みにプラスして、里親ならではの悩みを持っていることが改めて分かった。調査を基に、そこをフォローできるような体制を作っていきたい」と話している。
2002/11/22 共同通信
里子虐待死の女を起訴

 宇都宮市で里親が三歳の里子を殴り死なせた事件で、宇都宮地検は二十二日、傷害致死罪で宇都宮市日の出二丁目、韓国籍の主婦李永心容疑者(43)を起訴した。
 起訴状などによると、李被告は今月一日から三日にかけて、宇都宮市の民間乳児院から引き取った女児を突き倒して頭を床に打ち付けさせたり、顔を手で殴ったりして三日未明、死亡させた。
 李被告は調べに対し「泣きやまないので腹が立った」と供述している。
 李被告は二○○○年二月に里親登録し、昨年十二月に女児の兄を、今年七月に女児をそれぞれ引き取り育てていた。
2002/11/20 中日新聞 夕刊
前線日記 宇都宮・里子虐待死事件
 「子どもへの愛情深いはず」…が裏目 周囲思い込み、支援体制も整わず


 「子どもが欲しくて引き取ったはずの里親が虐待なんてするはずがない…」。宇都宮市のアパートで三日、大沼順子ちゃん(3つ)が里親の李永心容疑者(43)に頭を殴られ、死亡した幼児虐待事件は、そんな先入観を覆す出来事だった。極めてまれなケースとはいえ、そこには里親制度の“死角”も垣間見える。(宇都宮支局・吉田通夫)

 傷害致死容疑で逮捕された李容疑者は、韓国で幼稚園の先生だった。仕事で訪韓していた日本人の夫(43)と知り合い、十四年前に結婚したが、子どもに恵まれず、夫妻は一昨年二月に栃木県に里親登録。昨年十二月、順子ちゃんの兄(4つ)を引き取り、今年七月に順子ちゃんを迎えた。

 今月一日、児童相談所の児童福祉司は、養育が順調かどうかを確かめるため家庭訪問した。李容疑者は「最近(順子ちゃんが)よく泣くので困る」と、悩みを打ち明けた。しかし、家庭の雰囲気は円満そうに見えたため、児童福祉司は「よくあることなので、気長に子育てを」とアドバイス。同容疑者は「がんばります」と答えた。事件が起きる二日前だった。

 夫は仕事に忙しく帰宅が遅かった。近所に住む義父は息子夫婦の養育方針に口を挟むまいと、あえて干渉しなかった。事件後、二人はそれぞれ「なぜ防げなかったのだろう」と悔やんでいる。

 李容疑者は日本語がたんのうではなかったためか、近所付き合いもあまりなかった。県警の調べに「泣きやまないのでかっとなってしまった」と涙ながらに話したという。順子ちゃんの体には多数のあざが残っていたが、県警は同容疑者が孤立して育児ノイローゼに陥ったとの見方を強めており「憎くて虐待したというより、しつけでたたいたようだ」との同情も聞かれる。

 行政もこの事件にショックを受けた。栃木県中央児童相談所の金子準二所長は「里親に虐待を疑うような調査はできなかった」と“盲点”だったことを率直に認める。

 児童福祉法に基づく里親制度について国は先月、初めての大掛かりな改正を実施。子育てに疲れた里親が一時的に里子から解放される「レスパイト・ケア」という支援策も設けたが、栃木県ではまだ体制が整っておらず同ケアは今回のケースには間に合わなかった。

 三人の里子を育てた経験のある同県西那須野町の女性(61)は「心身ともに疲れて暴力を振るいたくなることもある」と正直に告白する。

 出産直後に乳児院に入るなど家庭経験のない里子の場合、里親の愛情を試すために泣いたり暴れたりすることがあるという。順子ちゃんも同じ境遇だった。

 そんな順子ちゃんにうまく対処できず、次第に孤立感を深めていった李容疑者。「里親だから心配ない」。周囲のそんな思い込みや、プレッシャーが追い詰めたのかもしれない。

 (メモ)

 養育里親制度 全国の児童相談所が窓口となり、書類審査と面接で経済状況、養育計画などを調べ、各都道府県の児童福祉審議会が登録の可否を決める。登録されると、児童相談所が里子を紹介。面談や外出、外泊を繰り返し、相性が良ければ里親に委託される。厚生労働省のまとめでは、2000年度末現在、全国で登録されている里親は7403世帯。うち1699世帯が2157人の里子を預かった。里子になれる子は乳児院、児童養護施設で生活する児童の1割にも満たない。
2002/11/15 朝日新聞 東京地方版/栃木
行政の里親支援体制強化、望む声 県、藤原町で大会 /栃木

 県里親大会(県里親連合会主催)が14日、藤原町内で開かれ、県内の里親や県職員ら約110人が参加した。宇都宮市の里子致死事件を受け、行政の里親支援の見直しや、里親同士の連携強化が話し合われた。

 参加者らは、死亡した大沼順子ちゃん(当時3)の冥福を祈り黙祷(もくとう)。分科会では里親らから、児童相談所への専門相談窓口の設置など、行政の里親支援について体制強化を望む声があがった。
2002/11/15 読売新聞 東京朝刊
里子虐待死事件後、藤原で初の里親大会 参加者、ショック隠せず=栃木

◆「相談所職員少ない」 里親ら問題点を指摘

 宇都宮市で三歳の女児が里親に虐待され死亡した事件の後、初めてとなる県里親大会が十四日、藤原町のホテルで開かれた。参加した里親たちは事件にショックを隠せず、「児童相談所の職員が少ない」「職員の訪問でも家庭の本当の姿は見えない」といった問題点を指摘した。県は、傷害致死容疑で逮捕された主婦が悩みを相談できずに事件を引き起こしたとして、「気軽に相談してほしい」と呼び掛けた。

 大会は年一回開催され、今回は、里親約百三十人と県関係者らが出席。冒頭、参加者全員で亡くなった女児のために一分間の黙とうを行った。

 あいさつした麻生利正県保健福祉部長は、事件について触れ、「(逮捕された主婦は)不安やストレスを相談できず、自分で思い詰めたことが要因の一つと聞いている。悩みを一人のものとしないで気軽に相談して欲しい」と話した。

 会場で声を聞くと、里親たちは、口々に事件の衝撃を語り、児童相談所などへの要望を訴えた。

 小学生の男の子二人を育てる五十歳の女性は「児童相談所とのつながりは生命線。つながりが少しでも離れると非常に不安になる」と児童相談所の役割の大きさを訴えた。

 二歳の女の子を育てている四十九歳の女性は「身近な問題なので衝撃を受けた。児童相談所は人数も少なく、現在の訪問では里親家庭の詳しいことを把握するのは難しいと思う。訪問に来ても“お客さん”程度の付き合いになっている」と指摘する。

 三人の里子を育てた四十二歳の女性も「逮捕された主婦は、幼稚園の職員の経験もあったのでショックを受けた。児童相談所の職員は少なく、二、三年で担当が代わり、長期的な視野に立って、相談できる人がいない」と訴えた。

◆「孤立した里親」対策が課題

 里親制度は、親がいなかったり、育児を放棄してしまったりした時に、都道府県が子どもの養育を希望者に委託する。

 里親は、児童相談所から健康や経済状態、家庭環境などについて面接調査を受け、登録されるが、県里親連合会の森富男副会長(67)は「社会の偏見などもあり、実子を育てる以上にストレスがたまる」と話す。

 悩みを抱える里親のために同会は、交流会などを開いている。里親同士が情報を交換し、話し合うことで悩みの多くが解決されている。

 ただ、里親であることを周囲に知られることを嫌い、交流を避ける人もいる。逮捕された主婦も、交流会や地域の研修会に全く参加していなかった。

こうした「孤立した里親」への心のケアはこれまでも課題となっていて、国は今年十月から新たな制度を導入した。

 育てるのに疲れた場合、一時的に施設や別の里親に預けられるようになり、児童相談所に里親を専門にアドバイスする職員を設けることになった。ただ、県では予算の関係などからまだ動き出しておらず、早期の実施を目指している。

写真=黙とうをささげる参加者たち
2002/11/15 毎日新聞 地方版/栃木
里子傷害致死事件受け、県が呼び掛け−−藤原で定例里親大会 /栃木

 ◇「悩み相談して」

 県里親連合会は14日、藤原町で年1回定例で行われる里親大会を開き、県内の里親や行政の福祉関係者約100人が出席した。冒頭で、今月3日に里親に殴られて亡くなった大沼順子ちゃん(3)への黙とうが行われた。麻生利正・県保健福祉部長は、傷害致死容疑で逮捕された里親の宇都宮市日の出2、主婦、李永心容疑者(43)について「不安やストレスが要因の一つだったようだ。養育する中で、悩みを一人の物にしないよう、児童相談所などに相談してほしい」と呼びかけた。

 席上、麻生部長は、「児童虐待の増加に伴い、(虐待を受けた子供のケアを行う)専門里親が始まったばかり。社会で里親への期待が高まっている中での事件で、非常に残念」とあいさつした。

 また、県児童家庭課は10月から里親を、(1)従来の「養育里親」(2)三親等以内の児童を養育する「親族里親」(3)1年以内の短期間預かる「短期里親」(4)専門的な研修を受け、児童虐待などで心身に影響を受けた子供を預かる「専門里親」の四つに分類することを報告した。里親が年7日間まで、里子を児童養護施設などに預け、一時的に休息が出来る「レスパイト・ケア」制度が導入されたことも紹介された。

 出席した50代の女性は「今回の事件は里親ということばかり話題になっているが、子育てをしている親のだれもが起こす可能性のある事件。子供は親だけでなく、社会も一緒に育てているという感覚を持って、制度を充実することが必要なのではないか」と話した。【川端智子】

2002/11/13 毎日新聞ニュース速報
<里親事件>孤立深め虐待 家庭訪問の職員見逃す 宇都宮

 里子の女児を殴って死なせた傷害致死容疑で逮捕された宇都宮市日の出の主婦、李永心容疑者(43)は宇都宮中央署の調べに「以前からたたいていた」と供述し、事件前、子育ての悩みを周囲に漏らしていた。だが事件2日前、県の担当職員が家庭訪問した際も事件の兆しは見逃されていた。行政の十分な支援を受けられず、孤立を深めた里親の姿が浮き彫りになってきた。

 李容疑者は自宅アパートで3日午前1時ごろ、大沼順子ちゃん(3)の顔を数回殴り、脳内出血で死なせた疑いで逮捕された。署の調べに「泣きやまないのでカッとなって殴った」と供述している。順子ちゃんの顔全体や手足には多数のあざが残っていた。韓国人の李容疑者は日本語が得意でなく、順子ちゃんに言葉が通じないいら立ちもあったとみられる。

 栃木県中央児童相談所によると、幼稚園教諭を9年間務めた李容疑者は夫と5年ほど前、韓国から引っ越してきた。子供に恵まれず、教職の経験もあることから、00年2月に里親登録され、昨年12月に男児(4)を、今年7月に妹の順子ちゃんを引き取った。

 事件後、相談所が夫に事情を聴くと、李容疑者は夫に「(順子ちゃんが)言うことを聞かない」「言葉(の発達)が遅い」と相談し、「たたいてしまった」とも話していたことが分かった。

 夫は「気長にやろう」とアドバイスしていたが、コンピューター関係の仕事で帰宅は毎晩遅かった。「(李容疑者は)家に閉じこもりがちだった」と夫の父親(71)は言う。

 厚生労働省は児童福祉司が里親家庭を随時訪問するよう指導している。だが李容疑者宅への訪問は順子ちゃんを預けた7月12日と、事件2日前の今月1日の2回だけ。1日は約1時間、里子の近況などを聴いたが、異状は見つけられなかった。相談所は「第三者の通報がない限り(虐待の跡がないか)子供の服を脱がせて調べることもできない」と説明する。

 4人の里子を育てた県内の40代の女性は当初、里子との衝突が絶えず、児童心理書などで独学して初めて原因を理解できたという。この経験から「行政は里親が学ぶ場や相談窓口を作ってフォローすべきなのに、預けっぱなしだ」と批判する。

 県は2〜3カ月に1回だった家庭訪問を月1回程度に増やす方針を決め、訪問時のガイドライン作りも検討している。 【川端智子、関東晋慈】

2002/11/12 NHKニュース速報
女児虐待死 逮捕の里親の女 しつけで以前からたたいていた

 今月三日、宇都宮市で児童福祉施設から引き取って育てていた三歳の女の子を殴って死亡させたとして、傷害致死の疑いで逮捕された里親の女は「以前からしつけのつもりでたたいていた」と供述し、警察では女の子への暴力が繰り返されていたものと見て調べています。
 この事件は今月三日、宇都宮市日の出(ヒノデ)の李永心(リエイシン)容疑者(四十三)が、里子として育てていた大沼順子(オオヌマジュンコ)ちゃん(三)を殴って死亡させたとして、傷害致死の疑いで警察に逮捕されたものです。
 警察では、順子ちゃんの全身にあざがあったことから調べたところ、李容疑者は「順子ちゃんが言うことを聞かない時には以前からしつけのつもりで手でたたいたりしていた」と供述したということです。
 李容疑者は四年前に韓国から日本に来ましたが、警察の調べに「環境の違いに悩んでいた」とも供述しているということです。
 警察では、李容疑者が子育てなどに悩んで順子ちゃんに繰り返し暴力を振るっていたものとみて、家庭と連絡をとっていた児童相談所の担当者などからも事情を聞いて詳しく調べることにしています。
2002/11/07 下野新聞 朝刊
里親の支援体制充実へ 坂口厚労相が考え示す 宇都宮の里子傷害致死

 宇都宮市で三歳の女児が里親(四三)に殴られ死亡した事件で、坂口厚生労働相は六日の衆院厚労委員会で「このような事件を防ぐのは、養育を里親だけに任せておいては難しい。児童相談所と児童施設と連携プレーをとっていかないといけない」と述べ、里親支援体制の充実を図る考えを示した。
 民主党の水島広子衆院議員の質問に答えた。水島氏が「里親が専門知識を持つのは必要だが、知識があれば一人でやっていけるというものではない。常にサポートを受けられる体制が必要だ」とただしたのに対し、坂口厚労相は「事件を聞き心痛む思いがした。」と発言。「虐待を受けた子の場合、ただ預かればいいと思っていると問題が生じる。里親制度の中身や能力が問われる時代になった」と制度の見直しを示唆した。
 厚労省の岩田喜美枝雇用均等・児童家庭局長も「里親のサポート体制は充分ではなかった」と不備を認め、児童相談所などが充分に相談に応じる体制をつくることを今後の課題に挙げた。

2002/11/06 共同通信ニュース速報
里親制度の拡充を検討 衆院委で厚労相答弁

 坂口力厚生労働相は六日の衆院厚生労働委員会で、親元で暮らせない児童を預かる里親制度について「日本は里親が少ない。質、量ともに前進させる必要がある」と、同制度の拡充策を検討する考えを示した。
 宇都宮市で三日起きた里親による傷害致死容疑事件に関連し、「最近の里親に預けられる子どもは(実の親による)虐待など、質的に今までと違ってきている面がある。里親の能力や中身が問われており、十分に配慮しながらやっていきたい」と述べた。
 厚労省によると二○○一年三月現在、千六百九十九人の里親が二千百五十七人の児童を養育しているが、欧米に比べて施設に入所する割合が高い。
 水島広子氏(民主)の質問に答えた。(了)
2002/11/06 下野新聞
論説  宇都宮市の里子傷害致死 里親支援の態勢見直しを

 乳児院から七月に里子として引き取った三歳女児を殴って死亡させたとして、宇都宮市の韓国籍の主婦が傷害致死の疑いで逮捕された。女児の全身には殴るなどしてできたとみられるあざが十ヶ所以上あるため、以前から虐待があった疑いが強まっている。
 この女性は、子どもができなかったため、日本人の夫と里親になることを二〇〇一年九月、県に申請。同年十二月に女児の兄(四つ)を引き取った。女児は県中央児童相談所が「兄妹そろって生活した方が良い」として養育を持ち掛けた。
 女性は韓国で九年間、幼稚園教諭として子育ての実務経験があり、安心して子どもを委託できる里親の一人だったという。兄弟そろって家庭的な養育環境の下にという配慮が生かされなかったのは、残念なことだ。
 なぜ、こうした事態に至ったのか、県は原因を究明し、虐待防止に向け、里親への支援態勢児童相談所の体制の充実に力を入れてもらいたい。
 乳児院に預けられた子どもは、二歳までしか養育してもらえない。その後は養護施設や里親に委ねられる。しかし、養護施設は十八歳まで預かれることや児童虐待の増加等で入所児が多く県内九ヶ所の施設はほぼ満員だ。
 里親に委託する際は、父母の状況や子どもの発達状況などを考慮し、最も適合する里親が選ばれる。里親と対象児童は外泊などの試験養育期間を経て、うまく親子関係が築けるか、などを見極めた上で委託される。
 今回の女児のケースで県は「里親選びに問題はなかった。」と強調している。しかし、里親との関係を見極める際、親子関係がうまく築けるかという縦の関係を重視する余り、周囲など横との関係を見ることが手薄になった面はなかったろうか。横の関係は子育てを支援するセーフティ−ネット(安全網)にも発展してゆく可能性がある。
 この女性は児童相談所や児童福祉司には相談しなかったが、子どもがよく泣くことやいうことを聞かないことなどに悩み、殴ってしまったという。子育てのストレスが自分を追いつめ、子どもに向かってしまったようだ。
 しかし、子どもは安心できる場に行くと里親の愛情を試す独特の問題行動を起こす。里親自身にも家族にも相当の負担がかかり、里親をやめてしまう人もいる。
 核家族化が進み、地域社会との関係も希薄になっている。カウンセリングの充実など、里親に対する支援やトレーニング体制を充実させる必要がある。
 県中央児童相談所には九人の児童福祉司がいる。宇都宮市を中心に五市十八町、十九家庭の里親を担当している。県内全体の里親家庭は六十ある。里親家庭への訪問は二、三ヶ月に一回程度でそれ以外は電話でのやりとりが主になるという。
 今回のケースで児童福祉司がこの女性宅を訪問したのは、女児が預けられた七月中旬と事件直前の計二回だった。
 専門家による支援態勢が手薄な背景には、専門職が少なく、児童虐待や非行などの増加に対応しきれないことや、里親は養育よりも養子縁組を希望するケースが多く、養子縁組が成立した後まで公的機関の支援を好まない傾向などがあるからだ。
 児童福祉の専門家は県全体で児童福祉司がわずか二十人。心理判定員は十人だ。専門職が容易に増えないのは欠員補充という原則があるためだ。しかし、県は少子化時代を迎え、子育てに力を入れると標ぼうしている。専門家の確保にも、もっと柔軟に対応してもらいたい。

2002/11/06 下野新聞 朝刊
里親養育、実態調査へ−宇都宮の里子傷害致死 県、支援体制見直し

 宇都宮市の大沼順子ちゃん(三つ)が里親(四十三)に殴られ、死亡した事件を受けて、県は五日、県内の里親の養育状況を把握するため、里子を引き取っている里親全員を対象に実態調査に乗り出す方針を固めた。里親との連絡など支援体制の見直しにつなげる考えだ。
 県によると十月現在、県内には二百二十人が里親登録しており、うち、六十人が里子を受け入れている。調査対象とする里親は、里子を受け入れている六十人全員。調査は六日から開始、県児童相談所職員などが直接、里親宅を訪問し、聞き取り調査する。
 里子がどういう環境で育てられているか、里親の子育て上の悩みなどを把握する。今月中の調査完了を目指す。
 この事件をめぐっては、亡くなった大沼順子ちゃん(三つ)が里子になってから、県中央児童相談所職員が家庭訪問したのは委託日の七月十二日と事件二日前の二度だけだったことが判明、同相談所は「(容疑者になった)里親へのサポートが足らなかった」と支援体制の不備を認めている。

県内の里親からは支援不足訴える声

 宇都宮市の大沼順子ちゃん(三つ)が里親(四十三)に殴られ死亡した事件で、県内の里親たちは事件を非難する一方、「心の傷を負った子どもへの対応を学ぶ機会が無い」と児童相談所などによる支援体制の不備を指摘する声を上げている。順子ちゃんも家庭経験がまったくない子だった。事件は心の傷を抱えた子に対応しきれない里親制度の未熟さを浮き彫りにした。
 「自分への注目を求めるのか、こちらの言うことの逆手に出た」。乳児院で育った男児(三つ)を養育する西那須野町の里親鷹栖律子さん(六十一)も当初、愛着障害を感じたという。引き取って約一年後、ようやく「抱っこして」と素直に甘えるようになった。
 「泣き出したいこともあった」鷹栖さん。児童相談所の職員に「虐待するかも知れないよ」ともらしても「あり得ませんよ」ととり合ってくれない。
 「相談所はこちらが求めなければ訪問してくれない。孤立しがちな里親にとって事件は誰にでも起こり得る。周囲のサポートが必要」と訴える。
 子どもたちの心の傷をいやす里親制度への取り組みは近年、始まったばかり。厚生労働省は先月、研修を受けた里親が被虐待児を受け入れる専門里親制度をスタートさせたが、里親への研修制度は依然として不十分だ。

 県南の四十代の女性の里親は現在、専門里親の研修中。「里親は『愛情を持って育てれば何とかなる』という甘いものではない」。この女性は一九九五年に里親登録したが、公的な研修は年一回、講演会がある程度だ。
 「乳児院などにいる子は愛着障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)になっていることが多く、そういう子への対応を学ぶ必要がある。充分な訓練や支援があれば事件は防げた」と訴える。
2002/11/05 毎日新聞 地方版/栃木
里子傷害致死 児童福祉司の家庭訪問、回数増やす方針 */栃木

 里子として預かっていた大沼順子ちゃん(3)を殴って死亡させた傷害致死容疑で、里親の宇都宮市日の出2、無職、李永心容疑者(43)が逮捕された事件で、県中央児童相談所の金子準二所長は4日、事件の再発防止のため、今後、早急に児童福祉司による里親家庭の訪問回数を増やす方針を明らかにした。委託直後の家庭を重点的に、訪問回数を1カ月に1回程度に増やし、電話連絡をまめに取るよう指導する。【川端智子】

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 ◇中央児童相談所、委託直後重点に

 同相談所には9人の児童福祉司がおり、宇都宮市を中心に5市18町、19家庭の里親を担当している。里親家庭への訪問は2〜3カ月に1回程度で、それ以外は電話でのやりとりが主だという。

 今回の事件前、児童福祉司が李容疑者の自宅を訪問したのは、順子ちゃんが預けられた7月12日と、事件直前の今月1日の計2回。児童福祉司はこの間、月に1、2回程度、電話で連絡を取った。順子ちゃんの住民票や行政への書類の提出を求めたほか、家庭での様子を簡単に尋ねただけだった。一方、李容疑者からの電話も書類の記入方法に関する質問程度だったという。

 厚生労働省は児童福祉司による里親家庭の訪問について、随時行うよう指導しているが、回数や頻度などは規定していない。金子所長は「里親と頻繁に接触することで、相談所との距離を近くすることが必要だ。環境に慣れるまでの段階が一番トラブルが起きやすい。相談をしてこない家庭にも連絡をまめに取れば、トラブルの兆候なども事前に察知でき、問題が顕在化するのではないか」と話している。

 県内では10月現在、220家庭が里親として登録され、うち60家庭で68人の里子が養育されている。

 ◇李容疑者を送検

 宇都宮中央署は4日、傷害致死の疑いで李容疑者の身柄を宇都宮地検に送検した。

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 ◇より手厚い支援必要−−金子所長に聞く

 金子準二・県中央児童相談所長に、事件前の李容疑者の家庭内の様子や行政の課題を聞いた。

 ◆事件2日前の訪問では、どんな様子だったのか

 1日の午後8時から、1時間程度行われた。担当者によると、(李容疑者、43歳の夫、順子ちゃん、4歳の兄)4人の一家団らんという感じだった。仲良くパズルをしたり、歌も歌うなど和やかな雰囲気だった。(李容疑者は担当者に対し)「3カ月たって、甘えるようになってきた」と報告していた。「最終的には2人と養子縁組をしたい」とも言っていた。

 ◆順子ちゃんの体には多数のあざがあったという。体のチェックはしなかったのか

 里親制度は行政と里親の信頼関係が大事。第三者から児童相談所に「児童虐待の可能性がある」といった通告がなければ、子供に服を脱がせ、調べることはできない。担当者は順子ちゃんの顔や手足など、見えるところにあざなどはなかったと話している。

 ◆相談などはなかったのか

 相談所や児童福祉司にはなかった。事件発生後、家族に事情を聴いたら、夫には「よく泣く」「言うことを聞かない」「他の3歳児に比べて言葉(の発達)が遅い」などと相談していたほか、(順子ちゃんを)「たたいてしまった」と話していたという。夫は軽くやったと思い、「気長にやろう」とアドバイスしていたと話していた。

 ◆里親選びに問題はなかったのか

 なかったと思っている。韓国で9年間、保母として経験があり、里親制度にも理解を示していた。安心できる里親の1人だった。「なぜ、こんなことになってしまったのか」と今でもショックだ。ただ「(李容疑者から)援助を求められなかったから、行政は何も出来なかった」で済まされる問題ではない。今後は児童福祉司の増員も含め、里親へのより手厚い支援が必要だと思っている。

■写真説明 大沼順子ちゃんが李容疑者と暮らしていたアパート
2002/11/05 北海道新聞 朝刊全道
3歳女児が殴られ死亡*里親の女逮捕*宇都宮

 宇都宮中央署は三日、里子として育てていた女児を虐待し死亡させたとして、傷害致死の疑いで韓国籍の無職李永心容疑者(43)=宇都宮市日の出二ノ四=を逮捕した。

 調べでは、李容疑者は、宇都宮市の民間乳児院から引き取った大沼順子ちゃん(3つ)が泣きやまないことに腹を立て、三日午前一時ごろ、自宅で顔などを手で数回殴り死亡させた疑い。順子ちゃんがぐったりしたため、夫(43)が救急車を呼び病院に運んだが、間もなく死亡した。順子ちゃんは全身にあざがあり、同署は李容疑者が以前から虐待を繰り返していたとみている。

 李容疑者は、夫と順子ちゃん、順子ちゃんの兄(4つ)の四人暮らし。
2002/11/04 朝日新聞 東京朝刊
3歳殴り死なせた疑い 宇都宮、里親の主婦を逮捕

 乳児院から里子として引き取った女の子(3)を殴り死なせたとして、栃木県警宇都宮中央署は3日、宇都宮市日の出2丁目、韓国籍の主婦李永心(リエイシン)容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕した。李容疑者は「泣きやまないので腹が立った」と供述しているという。県警では、女の子の全身にアザがあることから、以前から虐待があった可能性があるとみて調べている。

 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅のアパートで、7月に宇都宮市内の乳児院から引き取った大沼順子ちゃんの頭を素手で数回殴り、約1時間後に死亡させた疑い。夫が119番し、順子ちゃんを病院に運んだ。不審に思った病院から県警に通報があった。

 死因は外傷性の急性硬膜下血腫。暴行によるものとみられ、遺体の腕や脚などには多数の古いアザがあった。県警は、李容疑者が虐待を繰り返していたとみて調べている。

 順子ちゃんを李容疑者に養育委託した県中央児童相談所によると、委託した7月以来の家庭訪問を1日にしたときは円満そうだったという。李容疑者は日本人の夫(43)と01年9月、「子どもが出来なかったから」と里親になることを県に申請。同年12月に順子ちゃんの兄(4)を引き取った。

 同相談所は今年3月、「兄と妹そろって生活した方がよい」と考え、李容疑者夫婦に順子ちゃんの養育を持ち掛けた。夫婦は将来、兄妹を養子にする意向だったという。

 同児童相談所の金子準二所長は「近況報告は電話が多かった。家庭訪問の回数が多ければ異変に気づけたかもしれない。里子のサポート態勢を見直したい」と話した。

2002/11/04 毎日新聞 地方版/栃木
里子傷害致死 また幼い命が… 「泣きやまないので腹立った」 /栃木

 また幼い命が奪われた――。3日、宇都宮市日の出2の自宅で、里親の無職、李永心容疑者(43)が里子の大沼順子ちゃん(3)を殴って死亡させた傷害致死容疑で逮捕された。順子ちゃんは、7月に引き取られたばかり。順子ちゃんをはぐくむはずだった「家庭」で一体何が起きたのか。李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」と供述。順子ちゃんの体には多数のあざも見つかり、宇都宮中央署は虐待された疑いもあるとみている。

 李容疑者の家族の知人によると、李容疑者は10年以上前、仕事の関係で渡韓していた夫と知り合って結婚。当初は夫婦で韓国に住んでいたが、8年ほど前に夫の実家に近い、現在の自宅に引っ越してきた。日本語があまり上手でなかったせいか、近所付き合いはほとんどなかったという。

 里親登録の際、李容疑者から聞き取り調査を行った県中央児童相談所は「調査した職員の話では、(李容疑者は)教育熱心で里親制度にも理解を示していたと聞いている。安心して預けられる里親だったと思っていた」と驚いた様子で話した。

 近所の女性(25)は「男の子とお父さんが一緒に出かける姿をよく見かけた。身近なところで、こんなむごい事件が起きるなんて…」とくちびるを震わせていた。【川端智子、関東晋慈】
2002/11/04 毎日新聞 東京朝刊 (新13版)
里子の女児、殴り死なす 容疑の女逮捕、国の制度で引き取り−−宇都宮

 栃木県警宇都宮中央署は3日、里子として預かっていた3歳女児を殴って死亡させた傷害致死容疑で、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職、李永心容疑者(43)を緊急逮捕した。県によると、李容疑者は国の里親制度に基づく「養育里親」として乳児院から女児を引き取っていた。女児の体に多数のあざがあり、同署は李容疑者が以前から虐待していた疑いもあるとみている。

 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅居間で、里子の大沼順子ちゃんの顔などを手で数回殴り、死亡させた疑い。別室にいた李容疑者の夫(43)が泣き声や物音で駆け付けると、順子ちゃんがぐったりしていた。病院へ運ばれたが、同午前2時ごろ、死亡が確認された。死因は脳内出血。

 調べに対し、李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」などと供述しているという。

 李容疑者は99年9月、県に里親申請し、00年2月に登録された。乳児院から昨年12月に男児(4)を、今年7月に妹の順子ちゃんを引き取り、この2人と日本人の夫の4人暮らし。兄のほうに虐待の跡は見られないが、県中央児童相談所は一時保護した。同相談所によると、李容疑者は里親申請の際、ゆくゆくは養子縁組したいとの希望を伝えていた。

 埼玉県内でも94年、里親が同様の容疑で逮捕された。【川端智子、関東晋慈】

 ◇「虐待専門」新設の矢先

 国は今年度、虐待で傷ついた子供を専門家が引き受ける「専門里親」を新設、制度普及を目指す検討会も今月中につくろうとしていた矢先だけに「非常に残念で、戸惑っている」(厚労省の唐沢剛家庭福祉課長)と事件にショックを受けている。

 里親制度は児童福祉法に基づき1948年にできた。全国では7403人が里親に登録され、うち1699人の元に2157人の子供が預けられている(00年現在)。里親には国から月2万9000円が支給される。

 都道府県の福祉事務所や児童相談所は里親希望者から申請があると、家庭環境や経済状況を聞き取り、問題がなければ知事が登録する。栃木県中央児童相談所は「(李容疑者は)韓国で保母など教育関係の仕事をしていたと聞き、安心して預けていた」と話す。

2002/11/04 朝日新聞 栃木版
児童相談所、訪問気づかず 里子虐待死

 宇都宮市で3日、3歳の女の子が里親の女に頭を殴られて死亡した。県警によると、遺体には以前からのものとみられる多数のアザがあり、継続的に虐待が加えられていた疑いが強いという。里親の窓口になった県中央児童相談所は死亡の2日前に家庭訪問をしたが、異変には気づかなかったという。

 死亡したのは大沼順子ちゃん(3)。傷害致死の疑いで宇都宮中央署が緊急逮捕したのは里親の主婦、李永心容疑者(43)。

 順子ちゃんが里子として迎えられたのは今年7月。その後の養育状況は県中央児童相談所が把握することになっていたが、直接家庭訪問をしたのは2回だけで、それ以外は電話で近況を聞くのが主だったという。
 同相談所によると、2回目に家庭訪問をしたのは順子ちゃんが死亡する2日前の1日。担当職員が午後8時から約1時間、容疑者宅を訪ねた。順子ちゃんは容疑者のひざに乗るなど養母になじんでいる様子で、外に見える部分ではアザも見あたらず、異変はうかがえなかったという。
 同相談所によると、容疑者と夫の間には子どもがいなかった。容疑者らはまず昨年末に順子ちゃんの兄(4)を里子として受け入れ、さらに同相談所の勧めで順子ちゃんも迎えたという。
 容疑者に里親の適性があったかどうかについて、金子準二所長は「きちんと事前審査をしており、問題はなかったと思う」とした。しかし、一方で「ほかの児童虐待の対応などで里子のサポートが十分でなかった」とも話し、不備を認めた。
 李容疑者の夫の父によると、容疑者と夫は韓国で7〜8年前に結婚し、5年ほど前から夫の実家がある宇都宮に住むようになった。義父は「(容疑者は)しつけに厳しかったが、手を出すことはなかったと思う」と話す。容疑者は順子ちゃんを可愛がっている様子で、育児の悩みを訴えることもなかったという。

 里親制度は施設に預けられている子どもを希望者が一定期間引き取って育てるもので、里親の希望者は事前に登録をしておかねばならない。熱意や経済状況、家庭環境、性格などの観点で市町村の福祉事務所と県児童相談所が審査し、さらに県児童福祉審議会が承認を与える。李容疑者も同じ手続きを受けたという。
2002/11/04  東京新聞 栃木版
里親の児童虐待死事件 相談所関係者に衝撃
2日前訪問、悲劇見抜けず


 里親が里子に暴行し、死なせてしまった異例の児童虐待事件。県中央児童相談所は事件が起きる二日前の一日、月に一度の定期家庭訪問で中川美行さん(43)=宇都宮市日の出二=方を訪れ、李永心容疑者(43)、大沼順子ちゃん(3つ)、順子ちゃんの兄(4つ)と面談したばかりだった。「『円満にいっている』との報告だったが…」。以前から虐待を受けたとみられる順子ちゃんの悲劇を見抜けなかったことに、関係者は衝撃を受けている。
 県中央児童相談所によると、一九九八年十月末のまとめで、県内の里親登録数は二百二十世帯。このうち里子を受け入れているのが六十世帯で、里子は計六十八人。
 里親登録の申請があった場合、児童相談所の職員が家庭に出向いて両親と面談して養育方針などを聞き、問題がなければ県の児童福祉審議会に諮られ登録が決まる。両親に高齢や病気などの欠格理由がない限り、申請はほぼ通る。登録後は、両親の要望を基に児童相談所が里子を紹介し、相性を見極めたうえ委託、月に一度の家庭訪問や電話などで近況を調べる。
 中川さん夫妻の場合、まず、宇都宮市内の民間乳児院で順子ちゃんの兄と一緒に遊んだり、中川さん宅にホームステイさせた結果、「相性がいい」と判断し、兄は同年十二月に里子になった。
 同相談所は当初から「できれば、兄と妹を二人とも引き受けてほしい」と要望し、中川さんも受け入れる意思を示していたといい、中川さん夫妻の負担を軽くするため、順子ちゃんは兄に七カ月遅れて里子に出された。
 同相談所は「順子ちゃんについても、基本的に手続きは同じで、中川さんとの相性は良かった」と説明するが、李容疑者による虐待は、後から里子になった順子ちゃんだけに向けられていた。
 宇都宮中央署の調べでは、兄に虐待の傷あとがない一方、順子ちゃんの遺体には、全身にわたって、古いのも含めて十カ所以上のあざが確認された。
2002/11/03 21:31 読売新聞ニュース速報
3歳の女児殴り死なす、里親の母を逮捕…宇都宮

 栃木県警宇都宮中央署は3日、乳児院から里子に引き取った3歳の女児を殴って死なせたとして、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職李永心容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕した。女児は全身に多数のアザがあり、同署は、李容疑者が日ごろから虐待を繰り返していたとみて事情を聞いている。
 調べによると、李容疑者は3日午前1時ごろ、大沼順子ちゃん(3)の顔などを素手で数回殴り、死亡させた疑い。李容疑者の夫(43)が救急車を呼び、順子ちゃんは病院に運ばれたが、約1時間後に脳内出血で死亡した。李容疑者は「泣きやまなかったので腹が立って殴った」と供述しているという。
 栃木県中央児童相談所などによると、李容疑者は、「子どもに恵まれなかった。幼児教育の経験があり、社会に貢献したい」と里親に登録。昨年12月、順子ちゃんの兄(4)を引き取り、さらに今年7月、「兄妹は一緒の家庭で育てたほうがいい」と順子ちゃんを里子にした。
 同相談所の所員が今月1日、李容疑者宅を訪れた際に異状はなく、順子ちゃんが虐待されていることに気付かなかったという。

2002/11/03 21:16 毎日新聞ニュース速報
<女児虐待>3歳里子を殴り死亡させた韓国籍の女逮捕 栃木

 栃木県警宇都宮中央署は3日、里子として預かっていた3歳女児を殴って死亡させた傷害致死容疑で、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職、李永心容疑者(43)を緊急逮捕した。県によると、李容疑者は国の里親制度に基づく「養育里親」として乳児院から女児を引き取っていた。女児の体に多数のあざがあり、同署は李容疑者が以前から虐待していた疑いもあるとみている。厚生労働省は「預かった子供を里親が虐待死させたことなど聞いたことがない」と話している。

 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅居間で、里子の大沼順子ちゃんの顔などを手で数回殴り、死亡させた疑い。別室にいた李容疑者の夫(43)が子供の泣き声や物音で駆け付けると、順子ちゃんがぐったりしていた。夫の119番で病院へ運ばれたが、同午前2時ごろ、死亡が確認された。死因は脳内出血。

 調べに対し、李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」などと供述しているという。

 李容疑者は99年9月、県に里親申請し、00年2月に登録された。宇都宮市内の乳児院から里子として昨年12月に男児(4)を、今年7月に順子ちゃんを引き取っており、この2人と日本人の夫の4人暮らし。男児には虐待の跡は見つかっていないが、県中央児童相談所は一時保護を検討している。 【川端智子、関東晋慈】

 ◇里親制度普及を目指す検討会設置の矢先に……
 
 養育里親制度は、死別や経済的理由などで家庭環境を奪われた子供を一般家庭で保護、援助するため、児童福祉法に基づき1948年の厚生省(当時)通達でできた。国は今年度、虐待で傷ついた子供を専門家が引き受ける「専門里親」制度も新設。里親制度普及を目指す検討会を今月中に作ろうとしていた矢先だった。

 栃木県中央児童相談所によると、都道府県の福祉事務所や児童相談所は里親希望者から申請があると、家庭環境や経済状況を聞き取り、問題がなければ児童福祉審議会を経て知事が登録する。李容疑者について県中央児童相談所は「調査で問題はなかった。韓国で保母など教育関係の仕事をしていたと聞き、安心して預けていた」と話す。

 厚労省の唐沢剛家庭福祉課長は「非常に残念で戸惑っている。栃木県を通じて詳細に調査し、二度とこのようなことが起きないような方策を考えたい」と話す。全国では7403人が里親に登録され、うち1699人の元に2157人の子供が預けられている(00年現在)。里親には国から月2万9000円が支給される。

 石川守・東京都児童相談センター養育家庭支援担当課長の話 生活を始めてみて、予想もしていなかったストレスを里親も子も感じることはある。そのため、児童相談所は里親に委託後も児童福祉士が家庭訪問したり、電話するなどフォローアップするのが普通だ。担当者がどう応対していたのか。国も積極的に里親制度を活用していこうとしている時期だけに残念で悲しい事件だ。
2002/11/03 16:14 共同通信ニュース速報
3歳女児殴り死なせる 里親の女を逮捕

 宇都宮中央署は三日、里親になり育てていた女児を殴り死なせたとして傷害致死の疑いで宇都宮市日の出二ノ四ノ一九、韓国籍の無職女性・李永心容疑者(43)を逮捕した。
 調べによると、李容疑者は三日午前一時ごろ、宇都宮市の民間乳児院から引き取った大沼順子ちゃん(3つ)が泣きやまないことに腹を立て、自宅で顔などを手で数回殴り死なせた疑い。
 順子ちゃんがぐったりしたことから、日本人の夫(43)が救急車を呼び病院に運んだが、間もなく死亡した。順子ちゃんの全身にあざがあったことから、同署は、李容疑者が以前から虐待を繰り返していたとみている。
 李容疑者は、夫と順子ちゃん、順子ちゃんより先に里子として引き取った男児(4つ)の四人暮らし。
 栃木県中央児童相談所は、男児を一時的に保護する方針を決めるとともに、順子ちゃんが七月に引き取られた経緯などを調べている。(了)

2002/11/03 14:11 毎日新聞ニュース速報
<女児虐待>3歳里子を殴り死亡させる 43歳女逮捕 宇都宮

 里子として引き取った女児(3)を殴り死亡させたとして、栃木県警宇都宮中央署は3日、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職、李永心(りえいしん)容疑者(43)を傷害致死の容疑で緊急逮捕した。容疑を認めている。女児の体には多数のあざがあったことから、虐待の可能性もあるとして、李容疑者に事情を聴いている。

 同署の調べでは、李容疑者は同日午前1時ごろ、里子の大沼順子ちゃんの顔などを手で数回殴って死亡させた疑い。順子ちゃんがぐったりとして動かなくなったため、李容疑者の夫(43)が救急車を呼び、同市内の病院へ連れて行ったが、約1時間後の同午前2時ごろ死亡した。

 調べに対し、同容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」などと供述しているという。

 順子ちゃんは今年7月、李容疑者の里子として市内の乳児院から引き取られていた。同容疑者は、日本人の夫と、同様に里子として引き取った男児(4)、順子ちゃんの4人家族。

 県中央児童相談所は男児についても「とりあえず、一時こちらで保護することを検討している」と話している。
2002/11/03 08:56 朝日新聞ニュース速報
里子殴り死なせた疑い、女性逮捕 「泣きやまないので」

 乳児院から里子として引き取った女の子(3)を殴り死なせたとして、栃木県警宇都宮中央署は3日、宇都宮市日の出2丁目、韓国籍の主婦李永心(リ・エイ・シン)容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕した。李容疑者は「泣きやまないので腹が立った」と供述しているという。県警では、女の子の全身にアザがあることから、以前から虐待があった可能性があるとみて調べている。
 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅のアパートで、7月に宇都宮市内の乳児院から引き取った大沼順子ちゃんの頭を素手で数回殴り、約1時間後に死亡させた疑い。家にいた夫が119番し、順子ちゃんを病院に運んだ。不審に思った病院から、県警に通報があった。
 死因は外傷性の急性硬膜下血腫。暴行によるものとみられ、遺体の腕や脚などには多数の古いアザがあった。県警は、李容疑者が虐待を繰り返していたとみて調べている。
 順子ちゃんを李容疑者に養育委託した県中央児童相談所によると、委託した7月以来の家庭訪問を1日にしたときは円満そうだったという。李容疑者は日本人の夫(43)と01年9月、「子どもが出来なかったから」と里親になることを県に申請。同年12月に順子ちゃんの兄(4)を引き取った。
 同相談所は今年3月、「兄と妹そろって生活した方がよい」と考え、李容疑者夫婦に順子ちゃんの養育を持ち掛けた。順子ちゃんが夫婦と面会したり、自宅に短期宿泊したりして養育が可能か調査。7月12日に養育委託した。夫婦は将来、兄妹を養子にする意向だったという。
 同児童相談所の金子準二所長は「近況報告は電話が多かった。家庭訪問の回数が多ければ異変に気づけたかもしれない。里子のサポート態勢を見直したい」と話した。
2002/11/03 08:41 読売新聞ニュース速報
虐待の母?宇都宮で里子の女児殴り死なす

 栃木県警宇都宮中央署は3日、3歳の里子の女児を殴って死なせたとして、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職李永心容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕した。同署では女児の全身に多数のアザがあったことから、李容疑者が日ごろから女児を虐待していた可能性があるとみて調べを進めている。
 調べによると李容疑者は3日午前1時ごろ、里子の大沼順子ちゃん(3)の顔などを手で数回殴り、死なせた疑い。李容疑者の会社員の夫(43)が様子がおかしいのに気付き、救急車を呼んで、ぐったりしている順子ちゃんを同市内の病院に運んだが約1時間後に死亡したという。
 李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」と供述している。
 順子ちゃんは今年7月、同市内の乳児院から里子として引き取られ同容疑者に育てられていた。李容疑者は夫(43)、長男(4)と亡くなった順子ちゃんの4人暮らし。
2002/11/03 08:30 読売新聞ニュース速報
里子の女児虐待?死なす…母逮捕

 宇都宮中央署は3日、3歳の里子の女児を殴って死なせたとして、韓国籍の宇都宮市、無職李永心容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕しました。
 女児の全身に多数のアザがあり、警察は、李容疑者が日ごろから女児を虐待していた可能性があるとみています。
2002/11/03 下野新聞
3歳女児殴り死なせる 宇都宮の里親の女を逮捕

 宇都宮中央署は三日、里親になり育てていた女児を殴り死なせたとして傷害致死の疑いで宇都宮市日の出二丁目、韓国籍の無職女性・李永心容疑者(43)を逮捕した。
 調べによると、李容疑者は三日午前一時ごろ、宇都宮市の民間乳児院から引き取った大沼順子ちゃん(3つ)が泣きやまないことに腹を立て、自宅で顔などを手で数回殴り死なせた疑い。
 順子ちゃんがぐったりしたことから、日本人の夫(43)が救急車を呼び病院に運んだが、間もなく死亡した。順子ちゃんの全身にあざがあったことから、同署は、李容疑者が以前から虐待を繰り返していたとみている。
 李容疑者は、夫と順子ちゃん、順子ちゃんより先に里子として引き取った男児(4つ)の四人暮らし。
 栃木県中央児童相談所は、男児を一時的に保護する方針を決めるとともに、順子ちゃんが七月に引き取られた経緯などを調べている。

2002/11/03 sido