3 親が育てられない子どもはどこへ?(都道府県政令市 里親委託、施設入所の割合)

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3 親が育てられない子どもはどこへ?(都道府県政令市 里親委託、施設入所の割合)


親が育てられない子ども(要養護児童)を養育する社会的養護には、里親などの家庭的養護と、乳児院・児童養護施設などの施設養護があります。
この要養護児童の割合は、全国平均では、里親委託7.4%乳児院入所7.9%児童養護施設入所84.8%となっていて、実に92.6%の子どもが、施設で育つことを余儀なくされています。このアンバランスは、国連の子どもの権利委員会からも指摘されています。

●乳幼児の里親委託、施設入所の年齢別割合
 私たち里親は、乳幼児期の愛着形成は、人に対する基本的信頼関係の基礎をつくるものであるとして、「乳幼児は原則里親」を求めています。
 しかし、乳幼児期の要養護児童の割合は、里親委託9.6%乳児院入所32.3%児童養護施設入所58.0%となっています。0〜2歳の時期においても、里親委託9.8%乳児院入所73.0%児童養護施設入所17.2%となり、いずれも、1割弱しか里親に委託されていません。
年齢 人数 構成比
里親委託児 乳児院児 養護施設児 合  計 里親委託児 乳児院児 養護施設児 合  計
0歳 69 971 4 1,044 6.6% 93.0% 0.4% 100%
1歳 133 1,294 34 1,461 9.1% 88.6% 2.3% 100%
2歳 194 683 657 1,534 12.6% 44.5% 42.8% 100%
3歳 174 62 1,342 1,578 11.0% 3.9% 85.0% 100%
4歳 183 5 1,574 1,762 10.4% 0.3% 89.3% 100%
5歳 146 7 1,810 1,963 7.4% 0.4% 92.2% 100%
全体 899 3,022 5,421 9,342 9.6% 32.3% 58.0% 100%
0〜2歳 396 2,948 695 4,039 9.8% 73.0% 17.2% 100%


●学齢児童の里親委託、施設入所の年齢別割合
 里親宅にいる学齢児童は、5.5%前後を推移し、15歳で0.5ポイント減るものの、16歳、17歳では増えています。また、18歳以上についても、措置解除とならずにも里親委託されている子どもが、当該年齢の7.5%います。
 「里親は、高年齢児童を受けたがらない」と、いわれますが、施設では高年齢児が減少傾向であるにもかかわらず、里親は逆に増加傾向にあり、実態は逆であるといえます。
年齢 人数 構成比
里親委託児 養護施設児 合  計 里親委託児 養護施設児 合  計
6歳 138 1,981 2,119 6.5% 93.5% 100%
7歳 119 1,999 2,118 5.6% 94.4% 100%
8歳 121 2,142 2,263 5.3% 94.7% 100%
9歳 115 2,076 2,191 5.2% 94.8% 100%
10歳 118 2,125 2,243 5.3% 94.7% 100%
11歳 123 2,085 2,208 5.6% 94.4% 100%
12歳 124 2,111 2,235 5.5% 94.5% 100%
13歳 122 2,158 2,280 5.4% 94.6% 100%
14歳 125 2,197 2,322 5.4% 94.6% 100%
15歳 107 2,079 2,186 4.9% 95.1% 100%
16歳 114 1,544 1,658 6.9% 93.1% 100%
17歳 136 1,359 1,495 9.1% 90.9% 100%
18歳以上 91 1,119 1,210 7.5% 92.5% 100%
年齢不詳 2 20 22 9.1% 90.9% 100%
全体 1,555 24,995 26,550 5.9% 94.1% 100%




●都道府県政令市の里親委託、施設入所の割合( →  、 グラフ )



● 里親委託、施設入所の割合の上位10位、里親委託割合の下位10位

 都道府県政令市ごとに里親委託・施設入所の割合を見ると、里親委託の割合が大きく変わってきます。里親委託の割合の一位は、川崎市の24.1%、最下位は、佐賀県の0.4%と、19.7ポイントの差があります。措置された自治体により、里親家庭にいけたり、施設入所しか選択肢がなかったりと、子どもの選択肢は、大きな地域格差があります。
 厚生労働省は、平成17年度の新々エンジェルプランで、里親委託の割合を、7.4%から10%にすると、数値目標をたてるようです。
 東京都は、それに先立つ平成14年2月に発表した「TOKYO福祉改革STEP2」で、「ケアを必要とする子どものうち、当面、2割から3割程度に対して家庭的な養護を行えるよう、体制整備を目指します」と施設偏重の児童福祉政策を養育里親寄りに変更しました。

 里親家庭で育つ子どもの割合を変えていこうと、一部行政が動き出しましたが、なんら対策をとらない自治体もあります。各地の里親会は、行政に数値目標をたてるよう要望書等を提出して欲しいです。

※里親への委託割合が多い、施設入所割合が少ない自治体
 (ベストテン)

順位 里親委託 乳児院 児童養護施設
1 川崎市 24.1% 北海道 2.5% 川崎市 67.6%
2 新潟県 22.8% 札幌市 2.8% 新潟県 68.0%
3 北海道 22.7% 大分県 3.6% 滋賀県 73.3%
4 沖縄県 20.2% 長崎県 4.1% 仙台市 74.0%
5 滋賀県 16.2% 沖縄県 4.4% 北海道 74.7%
6 仙台市 13.0% 福島県 4.5% 沖縄県 75.4%
7 島根県 12.1% 京都市 4.6% 島根県 76.9%
8 宮崎県 12.1% 広島市 4.7% 栃木県 77.5%
9 千葉県 11.6% 佐賀県 4.8% 大阪市 79.5%
10 横浜市 11.2% 岐阜県 5.0% 山梨県 79.9%

※里親への委託割合が少ない、施設入所割合の多い自治体
 (ワーストテン)

順位 里親委託 乳児院 児童養護施設
1 佐賀県 0.4% 大阪市 15.1% 大分県 95.2%
2 奈良県 1.0% 名古屋市 14.0% 佐賀県 94.8%
3 愛媛県 1.2% 栃木県 13.2% 長崎県 94.0%
4 大分県 1.2% 仙台市 13.0% 北九州市 92.7%
5 鹿児島県 1.2% 徳島県 11.7% 広島市 92.4%
6 石川県 1.3% 東京都 11.6% 鹿児島県 92.0%
7 長野県 1.5% 島根県 11.1% 長野県 91.5%
8 長崎県 2.0% 山梨県 10.8% 大阪府 91.5%
9 福岡県 2.2% 香川県 10.6% 京都市 91.2%
10 大阪府 2.3% 滋賀県 10.5% 山口県 91.2%

● 自治体別 里親への委託割合の区分別構成比

 里親への委託の割合が5%未満の自治体が23(39.0%)あります。5〜10%未満を合わせると、里親委託が1割に満たない自治体が、全体の4分の3(74.5%)を占めています。里親委託の割合が2割以上の自治体は4つ(6.8%)に過ぎません。
 しつこいようですが、「里親か施設かという二者択一」ですらない実態がわかります。

区  分 自治体数 構成比
5%未満 23 39.0%
5〜10%未満 21 35.6%
10〜15%未満 10 16.9%
15〜20%未満 1 1.7%
20〜25%未満 4 6.8%
合  計 59 100%
●自治体別 乳児院の入所率の区分別構成
 乳児院児が、要養護児童の10%以上を占める自治体が11(18.6%)と2割弱を占めています。5%未満も、11(18.6%)と、まったく同じ数字となっています。
区  分 自治体数 構成比
5%未満 11 18.6%
5〜10%未満 37 62.7%
10〜15%未満 10 16.9%
15〜20%未満 1 1.7%
合  計 59 100%
●自治体別 児童養護施設の入所率の区分別構成
 養護施設児が、要養護児童の90%以上を占める自治体が15(25.4%)と4分の1を占めています。80%以上では、79.6%と5分の4になります。
3割割未満なのは、2自治体で、構成比は3.4%に過ぎません。 
区  分 自治体数 構成比
65〜70%未満 2 3.4%
70〜75%未満 3 5.1%
75〜80%未満 7 11.9%
80〜85%未満 16 27.1%
85〜90%未満 16 27.1%
90〜95%未満 14 23.7%
95%以上 1 1.7%
合  計 59 100%
●(参考) 県と政令市を合算した場合
都道府県
政令市
里親委託児 乳児院児 養護施設児
北海道 22.7% 2.5% 74.7%
札幌市 7.6% 2.8% 89.7%
北海道全体 18.0% 2.6% 79.4%
宮城県 7.4% 8.3% 84.3%
仙台市 13.0% 13.0% 74.0%
宮城県全体 9.9% 10.4% 79.6%
千葉県 11.6% 5.7% 82.6%
千葉市 9.5% 8.9% 81.5%
千葉県全体 11.2% 6.3% 82.4%
神奈川県 10.9% 7.6% 81.5%
横浜市 11.2% 8.5% 80.3%
川崎市 24.1% 8.2% 67.6%
神奈川県全体 14.5% 8.6% 76.9%
愛知県 6.6% 6.3% 87.2%
名古屋市 5.9% 14.0% 80.1%
愛知県全体 6.3% 9.5% 84.2%
京都府 2.5% 7.1% 90.4%
京都市 4.1% 4.6% 91.2%
京都府全体 3.5% 5.6% 90.9%
大阪府 2.3% 6.3% 91.5%
大阪市 5.5% 15.1% 79.5%
大阪府全体 3.5% 9.7% 86.8%
兵庫県 3.5% 7.3% 89.1%
神戸市 4.8% 8.9% 86.3%
兵庫県全体 4.0% 7.9% 88.1%
広島県 4.5% 5.6% 89.8%
広島市 3.0% 4.7% 92.4%
広島県全体 3.9% 5.2% 90.8%
福岡県 2.2% 7.2% 90.6%
北九州市 2.4% 5.0% 92.7%
福岡市 6.3% 10.1% 83.7%
福岡県全体 3.2% 7.3% 89.5%