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9・6 宇都宮事件についての意見交換会の報告


 9月6日、神楽坂エミールにて、「宇都宮事件を考える会」主催の意見交換会が開催されました。
 宇都宮事件を初公判から全て傍聴している竹中氏から、裁判の様子を報告しました。
 「今回の事件は、里親が知識を持たず、里親に対する支援が全くない状況で起きた事件です。しかし、裁判ではそのような状況の解明はいっさい行われず、里親の個人的資質の問題として扱われています。証人喚問は、被告の配偶者と本人のみで、子どもが育った乳児院や、里親を支援する責任を負う児童相談所は呼ばれていません」と、報告がありました。
 そこで、意見書をまとめ、関係機関に提出していくことになりました。



宇都宮里親障害致死事件に関する意見書(案)


 私たち「宇都宮事件を考える会」は、里親と里親制度に関心のある市民で構成した団体です。私たちは、昨年の11月3日の事件発生から今まで、大きな関心をもって、この事件の経過について情報を集め続けました。
 事件から1ヶ月たった12月8日に、「宇都宮事件を考える緊急集会」を開催し,事件の背景などについて話し合いました。「里親に対する事前研修がなされていないこと」「養護施設などには渡される児童票が里親には渡されず、事実上の丸投げであること」「乳児院に長期間育った子どもは,愛着形成に難があり,多くの里親が苦労していること」「欧米では、委託当初の不安定な時期は、ケースワーカーが頻繁に訪問していること」などを話し合い、別紙の「里親制度の充実に向けた緊急要望書」をまとめました。
 さらに、2月6日の初公判から、7月28日の第5回公判まで、すべての公判を傍聴してきました。その公判の中で、現行の里親制度の問題点なども明らかにされることを期待していました。
 しかし、乳児院における養育の実態や、乳児院で長期間育てられた子どもの様子、児童相談所の里親委託及び里親支援の実態は解明されませんでした。また、順子ちゃんが県内の児童養護施設から入所を断られ、二ヶ所の里親家庭(日本人)から里親不調として戻された話なども出てきませんでした。
 愛着形成の難しい子どもの委託を受け、どこからも支援を受けることが出来ず、追いつめられ、密室育児に悩み、結果として子どもを虐待死させてしまった事実のみが判明しました。
 さて、児童相談所は、事件以降、県内の里親家庭58世帯を対象に聞き取り調査を行い、今年3月に報告書をまとめました。そして、今年の4月より、中央児童相談所に県内全地域をカバーする専任の里親支援担当を新たに配置し、新たに新規登録里親への3日間の研修を義務付けました。
 李被告に、里親と研修を受け、愛着形成の難しい子どもへの理解があり、児童相談所の支援があったとしたら、この事件は起きていたのでしょうか。

 私たちは、事件の背景である、乳児院の養育実態と栃木県の里親制度の実態をお調べいただき、そのうえで、判決に臨んでいただきたいと願い、意見書を提出致します。

平成15年9月6日

宇都宮事件を考える会