宇都宮里親傷害致死事件とは

 2002年11月3日、栃木県宇都宮市の養育里親が、養子縁組を前提に委託された3歳の女の子を、叩いて死亡させる哀しい事件がありました。
 私たち里親有志は、翌月の12月8日に宇都宮里親傷害致死事件を考える緊急集会を中野ゼロで開催しました。そこで、愛着形成の難しい子どもや育てにくい子どもを委託されながら、支援もなく孤立し、養育の責任のみを負わされる里親の実態などを話し合い、「乳幼児の原則里親委託」「里親への研修の義務化」「里親への支援の充実」などを、里親制度の充実に向けた緊急要望書としてまとめました。
 そして、私たちは、2003年2月6日の初公判から10月7日の判決まで、6回の裁判全てを傍聴してきました。しかし、「乳児院の養育の実態」「愛着障害などの育てにくい子どもの養育に関する情報提供が無いこと」「児童養護施設では、順子ちゃんの受け入れができなかったこと」「2ヶ所の日本人里親家庭でも『里親不調』で戻されたこと」など、リスクが高かったにもかかわらず、「児童相談所の支援が無かったこと」など、事件の背景はまったく語られず、証人喚問は李被告とご主人のみでした。
第5回目の論告求刑公判では、検察側は「里子が里親になじむためには、実親子以上に子どもに寛容の精神と無償の愛が必要」「子どもにとって悪魔的存在となった」「卑劣かつ継続的な暴力」として、懲役6年を求刑しました。
 10月7日の判決公判では、「専門的見地に基づく被害児の委託決定等の当否をあげつらうことには慎重でなければならないとしても、乳児院の記録等から見る限り、被告人夫婦との交流を図る外泊等の際、被害児は本件犯行の直接的原因と同様の行動様式である泣くなどの拒否的反応を頻繁に示していたことが歴然としており、結果論的には、被害児の委託時期はもとより、弁護人が指摘するように、少なくとも委託後の児童相談所の対応が適切であったかどうかに関して、疑問が残らないではない。」と、児童相談所の対応に疑問を呈してくれましたが、懲役4年の実刑判決となりました。

 被告側は控訴し、今後は、東京高等裁判所で審議が行われることになります。