「社会的養護のあり方に関する専門委員会」

2004/1/9 update

 厚生労働省の審議会である社会保障審議会児童部会で、
「社会的養護のあり方に関する専門委員会」が開催されています。
児童養護施設関係委員は3名選出されていますが、里親関係委員は一人です。
しかし、里親関係委員といいながらも、全国里親会からの推薦を受けたわけではありません。
子どもの権利条約第20条にうたわれる「子どもが家庭で暮らす権利」など、
子どもの権利を社会的養護のあり方の基本に据えての議論が行われるのか検証が必要です。
児童福祉法や児童虐待防止法の改正にむけても、この審議会の議論は重要です。
どのような議論が行われているのか、広く知っていただくためにも、リンクを張りました。
また、印刷しやすいように、PDF形式のファイルを作りました。併せてご覧ください。

議事録など
2003/10/27 社会的養護のあり方に関する専門委員会 報告書(厚生労働省HP)   2985KB
2003/10/27 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第8回
2003/10/14 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第7回
2003/09/29 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第6回    114KB(資料捜索中!)
2003/09/19 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第5回議事録(厚生労働省HP) 170KB
2003/09 2003/09 時事通信配信  
子どもの家庭で暮らす権利の明文化を


 5月に設置された厚生労働省の諮問機関社会保障審議会児童部会「社会的養護のあり方に関する専門委員会」を第2回から全て傍聴しています。里親の一人として感想を述べたいと思います。
 まず、「子どもの権利擁護の強化」が検討項目にあるのに、子どもの権利の位置づけが不明確です。子どもの権利条約第20条は、「家庭環境を奪われた児童」が「国が与える特別の保護及び援助を受ける権利を有する」とし、国の与える代替的監護として、里親委託を一番に挙げています。しかし、「子どもが家庭で暮らす権利」について議論されていません。
 長期間の乳児院暮らしを経て里親家庭に来た幼児は、「愛着障害」と呼ばれる様々な問題行動を起こし、多くの里親が苦労しています。われわれはその経験から、ほかの先進国と同様「乳幼児は原則里親委託を!」と主張しています。
昨年、里親制度の厚生労働省令制定趣旨で「児童の発達において、乳幼児期の愛着関係の形成が極めて重要であり、できる限り、家庭的な環境の中で養育されることが必要である」とうたわれました。
 委員会では、「家庭で暮らす権利」に逆行する乳児院の在所を就学前まで延長する「乳幼児ホーム」構想や、児童養護施設に乳児院を併設する一貫養育構想など、子どもを施設に囲い込む意見ばかりが目立ちました。
 昨年、「少年の主張」大会で総理大臣賞をとった児童養護施設に暮らす中3の男の子は、作文の最後を「父さん、母さん、聞こえましたか。○○はここにいる。」と締めくくっています。これは家庭を求める心の叫びではないでしょうか。
現在の施設には、在所期限の定めがなく、親の所在が不明でも、子ども時代全てを施設で過ごすケースが2割程度ありますが、在所年限を定めようという意見もありません。委員会の議論からは、施設の地域小規模化や、大きな施設であればマンションのように区切るユニットケアにするなど、「施設中心」の現状を変える気はなく、里親については「少し増やしましょう」という程度の印象を受けました。
 米国では、1909年、ルーズベルト大統領が招集した第1回全米児童福祉会議で、「家庭生活は、文明の最もすばらしい所産である。緊急止むを得ない理由でない限り、子どもから家庭を奪ってはならない。両親の死亡、あるいは止むを得ない事情で子どもが家庭生活を続けることができなくなる場合には、子どもの実の家庭に最も似た環境で育てられるべきである」との宣言が採択され、施設から里親への転換点となりました。
 日本でも、親が育てられない子どもについての「子育ての理想」を示し、それを実現する「社会的養護のあり方」を議論する必要があります。社会的養護を必要とする子どもを受け入れる、わたしたち社会のあり方も問われているのです。(投稿:東京都養育家庭連絡会副会長)
2003/08/28 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第4回議事録(厚生労働省HP)  165KB
2003/08/28 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第4回 意見書  251KB 
2003/08/27 2003/08/27 朝日新聞ニュース速報
養護施設―普通の暮らしがほしい

 「ただいま」と、子どもたちが次々に帰ってきた。おやつをほおばる子、テレビのアニメに夢中になる子。夕暮れ、どこの家庭でも見られるような光景だ。
 東京都日野市にあるこの6LDKの住宅は「日野キッズ」といい、ある社会福祉法人が町なかに開いた四つ目のグループホームである。様々な事情で親もとで暮らせなくなった5歳から15歳までの6人が、職員4人と今春から共同生活を始めた。
 しかし、このような家庭的な環境で育つ子はまだまだ少ない。里親のもとで育つ子も2000人ほどだ。親と一緒に暮らせない約3万人の子どもたちが、全国に550ある児童養護施設で集団生活を送っている。
 家庭という場を失った子どもたちを育てるのに、いまのような施設中心のあり方でいいのだろうか。
 戦後すぐのころは、大勢の戦災孤児を保護しなければならなかった。50年たって施設に入る子どもの実態は大きく変わり、いまでは親から虐待を受けた子どもたちが半数を占めている。
 心身に深い傷を負った子どもたちは人間関係の結び方がわからず、ときには他の子どもへの暴力やいじめなどを引き起こすこともある。一人ひとり、個別に見守ることが欠かせない。
 虐待件数が日本よりはるかに多い米国では、家庭で育てることが困難になった子どもたちは、まず里親に託される。里親は児童福祉制度のなかにきちんと位置づけられて、手厚い支援や研修がある。60万人の子どもが里親のもとで、約10万人が地域のグループホームで暮らす。
 子どもたちが心身の傷をやわらげ、自立したおとなに育つために必要なのは、親に代わる人たちの深い愛と、地域での普通の暮らしではないだろうか。
 「日野キッズ」の子どもたちは料理の手伝いをしたり、集金の人に応対したり、どきどきしながら初めての出来事に向き合っている。近所の友だちとの行ったり来たりも増えた。そんな体験を重ねることが、将来、家庭をもつ自信につながっていく。
 ここ数年、高齢者や障害者の福祉では、人里離れた施設に入るのではなく地域でその人らしく生きられるように、政策が改められつつある。
 子どもたちにも同じような仕組みを整えたい。大規模な施設から、里親の手やグループホームへ。毎年、数値目標を掲げて着実に取り組むことはできないものか。
 あわせて、いまある施設のなかでも小さなグループ単位で育てられるよう、職員を増やすことが急がれる。子ども6人に対して職員1人という厚生労働省の職員配置の基準は76年から変わっていない。 厚労省は「社会的養護のあり方に関する専門委員会」を設けて、半世紀ぶりに子どもたちの養育の仕方を見直そうとしている。その大胆な結論を期待したい。
2003/08/22 全国里親会と厚生労働省の意見交換会
2003/08/01 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第3回議事録(厚生労働省HP)  124KB 
社会的養護のあり方に関する専門委員会 第3回資料  374KB 
2003/06/30 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第2回議事録(厚生労働省HP)  113KB 
2003/05/23 社会的養護のあり方に関する専門委員会 第1回議事録(厚生労働省HP)  94KB 
2003/05/23 2000/05/23 共同通信ニュース速報
養護施設や里親制度見直し 厚労省が専門委員会初会合


 厚生労働省は二十三日、虐待を受けた子供を受け入れる施設体制や里親制度などを検討する「社会的養護の在り方に関する専門委員会」の初会合を開いた。
 九月をめどに報告書をまとめ、すでに議論が進んでいる「児童虐待防止に関する専門委員会」での結論と
併せ、今年予定されている児童虐待防止法の見直しに反映させる方針。
 初会合では児童養護施設に新しく入所する子供の半数近くが虐待経験を持っている実態を踏まえ、家庭的な個別ケアがしやすい施設の小規模化を検討することを確認。
 職員の質的、量的な確保や通所施設など地域支援機能の強化についても協議することを決めた。
 また、里親支援の強化や十八歳、十九歳で施設を出て自立しなければならない子供への支援体制なども話し合う方針。
 現行の児童虐待防止法は二○○○年十一月に施行。「親権」の制限や家庭への立ち入り調査が盛り込まれた。三年後の今年が見直し時期に当たり、施設入所をめぐる司法関与などを中心に議論が進められている。
2003/05/14 「社会的養護のあり方に関する専門委員会」の設置に関する要望 →PDF

 4月18日付共同通信ニュースによると、厚生労働省は、虐待を受け子どもを受け入れる施設体制や里親制度などを見直すため、「社会的養護のあり方に関する専門委員会(以下「あり方専門委員会」)」を5月に設置する方針を定めました。今までの社会養護は、そのまま「施設養護」であり、親が育てられない子どもは、施設での大集団の生活しか選択肢がありませんでした。子どもを家庭にあずかり育てている私たち里親は、全ての子どもが家庭環境の中で、自分だけを見てくれる大人の元で育ってほしいと願っています。
 また、日本政府が批准している「子どもの権利条約」第20条「家庭で暮らす権利」や第12条「意見表明権」など、子どもの権利としての社会的養護のあり方についても、議論をお願いしたいと考えています。

 しかし、いくつかの懸念があります。
 まず、「あり方専門委員会」の委員に、里親の代表が選ばれるのかという点です。平成14年12月に「児童虐待防止対策に関する専門委員会」が発足しましたが、この委員会には、児童養護施設代表が2人も参加しているにもかかわらず、里親を代表する方は委員にはおりません。もちろん、いずれも児童福祉には造詣の深い方々ばかりですから、里親に関連した意見を十分に出してくださるとは思います。 とはいうものの、施設養育の専門家にとり、家庭養育する里親の立場をどこまで代弁できるのか限界もあると思います。
 昨年10月に改正された里親制度では、披虐待児を受ける専門里親が創設されました。披虐待児の癒しと回復には、家庭的環境での密な関わりが有効であるとの認識から、専門里親が創設されたと理解しています。にも関わらず、「虐待防止専門委員会」に里親を代表する委員がいないことは、里親側のさまざまな意見が反映されにくいと思います。
 この5月に発足する「あり方専門委員会」においても、同じ轍をふまないようにお願いしたいと思います。

 昨年公布された「里親の認定等に関する省令」及び「里親の行う養育に関する最低基準」の制定趣旨には、「児童の発達においては、乳幼児期の愛着関係の形成が極めて重要であり、できる限り、家庭的な環境の中で養育されることが必要である。特に、虐待など家庭での養育に欠ける児童を、温かい愛情と正しい理解を持った家庭の中で養育する里親制度は極めて有意義な制度であり、その拡充が求められている。」とありますが、現実には、里親家庭に行く子どもよりも、乳児院で長期に生活する子どもが大半です。「乳幼児は原則里親委託」という方針が打ち出されていないため、乳児院で長期間暮らし、愛着形成ができないままに里親家庭にいき、里親が不必要に苦労している現状があります。
 改正要旨での中でも、厚生労働省は「里親か施設かという二者択一という捉え方ではなく」と表現していますが、平成12年度の厚生労働省発表の資料によると、親が育てられない子どもは、大半が児童養護施設・乳児院に行き、里親家庭にいく子どもは6%にすぎません。子どもにとっては、二者択一ですらない厳しい現状があります。

 このような状況を鑑み、私たちは里親として「社会的養護のあり方に関する専門委員会」の設置について、以下の要望をいたします。

1.「社会的養護のあり方に関する専門委員会」に里親を代表する委員を複数入れてください。
2.子どもの権利条約第20条にうたわれる「子どもが家庭で暮らす権利」など、子どもの権利を社会的養護のあり方の基本に据えてください。
3.「乳幼児は原則里親委託」を実現するような、乳児院のあり方をも含めた検討をしてください。


平成15年5月14日

東京都養育家庭連絡会 養育家庭里親有志
問合せ先 080-3127-9478

2003/04/18 2003/04/18 共同通信ニュース
児童施設の小規模化を検討 虐待防止法改正に向けて 厚労省


 厚生労働省は、虐待を受けた子供を受け入れる施設体制や里親制度などを見直すため「社会的養護の在り方に関する専門委員会」を来月にも設置する方針を十八日までに決めた。検討内容は今年予定されている児童虐待防止法の改正に反映させる。
 専門委員会では、虐待を受けて施設に入所する子供の急増や施設不足を受けて、個別の対応がしやすいよう施設の小規模化を検討。生活と治療の両面から養護を考えていく見通し。
施設と里親の連携強化や、里親制度の普及・拡充、十八歳、十九歳で施設を出て自立しなければならない子供への支援体制なども協議する。
 また施設職員の確保、労働条件の改善、研修などによる資質の向上についても検討する予定。
現行の児童虐待防止法は二○○○年十一月に施行。「親権」の制限や家庭への立ち入り調査が盛り込まれた。今回の改正では、立ち入り調査の司法関与などが焦点となっている。(了)

社会的養護のあり方に関する専門委員会委員名簿


委員名 役職 分類
安達 孝彦 松江赤十字乳児院 院長 乳児院
奥山 真紀子 国立成育医療センターこころの診療部長  
加賀美 尤祥 児童養護施設山梨立正光生園 常務理事
日本社会事業大学 社会福祉学部 教授
養護施設
兜森 和夫 母子生活支援施敬 白百合ホーム 施設長  
才村 眞理 帝塚山大学 人文科学部 教授  
坂本 正子 大阪府健康福祉部児童家庭室家庭支援課課長補佐  
庄司 順一 青山学院大学 文学部 教授
高橋 利一 児童養護施設至誠学園 常務理事
法政大学 現代福祉学部 教授
養護施設
武田 陽一 自立捷助ホーム 憩いの家 施設長 自立援助ホーム
徳地 昭男 児童自立支援施設 国立武蔵野学院 院長 自立支援施設
中田  浩 児童養護施設 聖家族の家 施設長 養護施設
西澤  哲 大阪大学大学院 人間科学研究料 助教授 虐待防止
野田 正人 立命館大学 産業社会学部 教授  
松原 康雄 明治学院大学社会学部 教授  
四方 輝子 子どもの虹情報研修センター 顧問  


2003/04/08

平成15年4月8日

社会的養護のあり方に関する専門委員会の設置について(案)

厚生労働省 雇用均等・児童家庭局


1.設置の趣旨

 近年、少子化や都市化の進行、離婚の増加、地域における地縁関係の希薄化など児童と家庭を取り巻く環境は大きく変化してきており、児童虐待や配偶者暴力など家族を巡る様々な問題現象も生じている。
 要保護児童に関する社会的養護施策については、平成9年の児童福祉法改正以降、地域小規模養護施設や専門里親の創設など、その積極的な推進に努めてきたところであるが、今日では児童養護施設に新規に入所する児童の半数近くが被虐待経験を持つ実態にあり、適切な施設ケア体制の確立や里親制度の拡充など、新たな状況に対応した社会的養護システムの構築が求められている。
 このため、施設養育、家庭的養護及び社会的養護支援システムなど、社会的養護全般のあり方についてご検討いただくための専門委員会を設置することといたしたい。また、検討に当たっては、児童虐待防止対策に関する専門委員会と密接な連携を図りながら進めることといたしたい。

2.主な検討課題(案)

○ 施設養護のあり方について
  ・生活機能と治療機能の適切な組み合わせによる望ましいケア体制の構築
  ・施設の専門性を生かした家庭支援など地域支援機能のあり方
○家庭的養護(地域ケア)について
  ・里親制度の普及及び拡充
  ・里親支援システムの強化
○年長児童に対する自立支援
  ・自立援助ホームのあり方
○社会的養護支援システムのあり方について
  ・施設機能の評価や苦情処理への対応など児童の権利擁護の強化
  ・施設入所・退所等に際してのアセスメントの策定などサービスの質の向上
○ その他

PDF


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2002/8/10sido