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2002/11/04 update

 埼玉県 里親の傷害事件 
平成11年(1999年)5月2日

2002/09/10 朝日新聞
「預けて障害」、里親と県提訴 埼玉の両親

 長男が知的障害などに陥ったのは里親の責任だとして、埼玉県川口市の両親が、所沢市の里親夫婦と、仲介した埼玉県を相手取り、1億6500万円の損害賠償請求訴訟を、9日までにさいたま地裁に起こした。

 訴状によると、長男は1歳当時の98年12月、経済的理由から所沢児童相談所を介して里親に預けられた。翌99年4月、外傷性急性硬膜下血腫などの診断で手術を受け、右半身マヒ、言語、知的障害の後遺症を負った。里親が手術の2日前、食事をのどに詰まらせた際に長男の「頭をたたくなどの誤った措置を施したこと」が原因、などと主張している。

 県に対しては、被告夫婦を里親に認定しながら、必要な研修や指導を怠ったと責任追及した。


2002/09/09 毎日新聞ニュース速報
<里親らを提訴>子供の障害で1億6525万円賠償請求 埼玉

 埼玉県児童相談所を通じ、里子に出された同県川口市の男児(5)が言語障害や知的障害になったのは「食べ物を詰まらせた際に里親が措置を誤った」ためと、男児の代理人の両親が同県所沢市の里親と県を相手取り、約1億6525万円の損害賠償を求める訴えをさいたま地裁に起こしたことが9日、分かった。

 訴状によると、両親は98年12月、経済的理由で、男児を所沢児童相談所を通じて所沢市の夫婦に里子に出した。99年4月20日、当時2歳だった男児は頭に傷を負って強度の意識障害や脱水症状などを起こし、大学病院で緊急手術を受けたが、後遺症が残った。この時、里親は医師に「4月18日に食べ物を詰まらせたので(男児を)たたいたり、シェークした(振った)。19日に元気がなくなり、20日はぐったりしていた」と説明したという。当時、男児は栄養不良状態で、額や背中にも傷があった。

 両親は里親に男児の養育を委託した県も「必要な指導を怠った」と主張している。県こども家庭課は「訴訟を起こされている立場なので、現時点でコメントできない」と話している。


2002/09/09 共同通信
「長男に障害」と里親提訴

 里親に預けた長男(5つ)が事故で重い障害を負ったとして、埼玉県川口市の会社員(40)と妻が九日までに、里親夫婦と埼玉県に約一億六千五百万円の損害賠償を求め、さいたま地裁に提訴した。
 訴えによると、両親は経済的な理由から一九九八年、所沢児童相談所の仲介で所沢市の夫婦に長男を預けた。長男は九九年四月二十日、外傷性急性硬膜下血腫で入院し、重い言語障害などが残った。里親夫婦は医師に「食事をのどに詰まらせたのでたたいたりした」と説明したという。
 原告側は「里親の措置が不適切だったのが原因。研修や指導を怠った児童相談所にも責任がある」と主張している。
共同通信社

1999/05/18 読売新聞社
短期里子の2歳児入院 外傷性急性硬膜下出血などで手術=埼玉

 ◆所沢児童相談所、里親に“任せきり”反省

 昨年十二月に、両親から県所沢児童相談所(岩崎政功所長、所沢市並木)を通じて里親に預けられていた男児(現、二歳二か月)が先月二十日、外傷性急性硬膜下出血などで防衛医大病院で緊急手術を受け、一命を取りとめていたことが、十七日までに分かった。「けがの原因をはっきりさせてほしい」との両親からの訴えを受けて所沢署は、里親らから事情を聞いているが、一方で、同児童相談所は、里親が月一回の研修に出席していなかったことを黙認していたことや、今年に入ってからは男児の現状調査も電話だけの確認にとどめていたことなど、里親に“任せっきり”にしていた実態も明らかになった。

 両親が経済上の理由などから男児を児童相談所に預けたのは、昨年十二月二十一日。当時、二歳に満たなかったため、児童相談所は乳児施設への入所を検討したが、施設が満室だったため、一か月―一年間預ける短期里親制度を活用して、同日、里親宅に預けた。

 この男児に異変があったのは、先月二十日。「左手が軽くけいれんしていて、熱っぽかった」(里親)ため、里親が男児を所沢市内の防衛医大病院に運び込んだ。診断の結果、左頭部の外傷性急性硬膜下出血と大脳半球急性脳腫脹(しゅちょう)と分かり、緊急手術。ICU(集中治療室)で二週間治療を受け、現在は小児病棟に移ったが、「右手足にまひがあり、一人では歩けない状態」(担当医)だという。

 児童相談所は、里親登録をしている家庭を対象に月一回の研修を実施しているが、男児の里親は、男児を預かってから一度も研修に出席していなかった。また、児童相談所の児童福祉司らも、十二月に二回だけ里親宅を訪問しただけで、その後は電話で男児の状況を確認していただけだった。

 児童相談所のこうした実態について、両親は「これでは、安心して子供を任せられない。子供が死にそうになった現実を県はどう考えているのか」と、けがの原因究明を求めるとともに、県の指導に疑問を投げかけている。里親は「今回のことで、里親が養育に熱心でなかったという印象を持たれるのが、つらい」と、登録している他の里親の立場をおもんぱかっている。

 県こども家庭課によると、五月一日現在、県内六か所の児童相談所での里親登録は、四百六十一組。そのうち、百五十二組が子どもを委託されているが、「こうしたトラブルは、ごくまれなケース」(同課)という。

 岩崎政功・県所沢児童相談所長の話「子どもの両親には申し訳ないと思っている。月に一回実施している里親研修の指導の徹底など、里親との関係を密にするマニュアルを見直し、二度とこのようなことがないようにしたい」

 日本社会事業大・高橋重宏教授(子ども家庭福祉論)の話「乳幼児である場合、里親への研修・指導をどの程度やっていたかが問題。今回のケースも研修・指導について検討の余地があると思う。幼児の場合、首がすわっておらず、あやすために体を揺することもよくない。どこまで(県が里親を)教育していたのか疑問だ」

 ◇短期里親制度 保護者が病気やけが、または経済上の理由などから児童を養育することが難しい場合、厚生省児童家庭局長通知により、児童を一か月から一年間、里親に委託する制度。登録制で、面接で家庭環境などをもとに里親を決定する。養育費として一か月に約六万円を里親に支給。児童相談所には〈1〉里親研修〈2〉定期的な里親宅への訪問――などが求められている。

2002/11/04 sido