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宇都宮 里親傷害致死事件の報道


2003/11/15 下野新聞
社会的使命を再認識/県内の里親ら意見交換/藤原町

 【藤原】第四十八回県里親大会(下野新聞社後援)が十三日、滝のホテルで開かれた。
 県内の里親と関係者らが一堂に会して、社会的使命を認識するとともに、社会に一層の理解を求めようと、県里親連合会が毎年開催。今回も県内各地から約百人が参加した。
 式典で、県里親連合会の狐塚博成会長は、昨年秋の里親による傷害致死事件にも触れながら、「里親に対する社会の関心と期待はますます高まっている。里親信条を心にとどめ、自己研さんに励んで健全育成に当たることが大切」とあいさつ。続いて、五年以上里子の養育に当たる二組の夫婦と優秀児童五人を表彰した。
 この後、乳幼児期、学童期(小学生)、思春期(中高生)などの分科会に分かれ、それぞれの成長に合わせた子どもとの接し方について、活発に意見を交わした。
 [写真説明]里親としての使命感を新たにした県里親大会


2003/10/08 朝日新聞
行政支援のあり方言及 宇都宮の里子虐待死、里親に実刑判決

 昨年11月、宇都宮市で里親が里子を虐待し死亡させ、県内外の里親に衝撃を与えた事件は7日、宇都宮地裁で判決公判があった。里親には懲役4年の実刑判決が言い渡されたが、行政の支援体制のあり方にも疑問を投げかけた。
 傷害致死の罪で懲役4年を言い渡されたのは宇都宮市日の出2丁目、韓国籍の無職李永心被告(44)。弁護側は犯行当時、李被告は発達の遅れた里子の順子ちゃん(当時3)を育てる中で、神経衰弱になり自分を制御できない状態だったと主張し、執行猶予付き判決を求めた。
 飯渕進裁判長は李被告が事件直前に相談員が家庭を訪問した際、虐待が発覚することを恐れ、外見から傷がすぐに分からないよう暴行を加えたことなどを指摘。「自己の行動を十分に理解している」として弁護側主張を退けた。弁護側が控訴するかどうか未定という。
 判決文の朗読を前に李被告は「日本でいることが出来ないと、順子に謝罪できない」と涙を流し訴えた。東京入国管理局によれば、一般的に外国人が日本で懲役1年以上の実刑判決を受けると服役後に強制送還されるという。
 飯渕裁判長は「少なくとも委託後の児童相談所の対応が適切であったのかどうかに関して、疑問が残らないではない」と行政の支援のあり方にも言及した。
 裁判を傍聴していた、里親の経験が長いという県内の女性(47)は「この裁判は専門家不在だ。発達の遅れた子どもの実態を分かっていない」と話した。

○里親支援、県など体制見直し

 今回の事件を受け、県や児童相談所などは里親のサポート体制の見直しを進めている。特に里親の登録時と里子を預けた初期の時期の支援内容の改善に力を入れている。
 県児童家庭課は事件直後、県内の58世帯の里親と67人の里子から悩みやトラブルなどを聞いた。昨年12月には同課や里親連合会などからなる「里親支援検討班」を立ち上げ、今年3月には提言を含んだ報告書を県に提出した。
 報告書を受け、宇都宮市野沢町にある県中央児童相談所は4月、里親支援のために専門の職員2人を新たに置いた。4月からは同相談所は里子を委託してからの4カ月間は少なくとも月に1回、相談員が家を訪問するようにしている。
 里子や里親の変化に気付くことが出来なかった事件の反省から、より気配りが出来るように複数の職員で訪問するようにもした。金子準二・同相談所長は「(里子や里親が不安定になりやすい)委託直後の支援に特に力を入れた」と話す。
 事件では李被告が韓国の幼稚園で保母として働いていた実績から、県側は李被告を「子育てのプロ」と過信した。この反省から、里親の登録手続きも変えた。これまでは里親が夫婦の場合、面接時に片方の親の出席でも認めていたが、同伴での出席を徹底した。面接では里父の育児への参加への姿勢、里親の家族の近隣との付き合い状況なども判断基準に取り入れた。
 「(提言を受けて)少しずつ手をつけ始めた。今年と来年で軌道に乗せていきたい」と金子所長は話す。
 こうした動きに県内の多くの里親が加盟する県里親連合会の狐塚博成会長は「事件はショックだった。里親も研修などの会合に積極的に参加することで、気持ちを引き締めて今後このような事件がないようにしたい」と話した。(峯俊一平)


2003/10/08 読売新聞
宇都宮の里子虐待死 被告に懲役4年判決 地裁「児童相談所対応に疑問」=栃木

宇都宮市で昨年十一月、里子の大沼順子ちゃん(当時三歳)が虐待を受けて死亡した事件で、傷害致死罪に問われた、同市日の出二、無職李永心被告(44)の判決公判が七日、宇都宮地裁であった。飯渕進裁判長は「こともあろうに里親の手で、短過ぎる生涯を閉じざるを得なかった順子ちゃんは、あまりにも哀れで、結果は重大」として、懲役四年(求刑・懲役六年)を言い渡した。
飯渕裁判長は、李被告が「分別も付かない順子ちゃんの言動に憎しみをむき出しにし、抑えきれない感情の矛先を向けた」と指弾するとともに、県中央児童相談所の対応に疑問を投げかけた。
順子ちゃんは里子に決まる前、李被告夫婦と外泊したが、泣き出すなどの拒絶反応を示した。判決ではこの点をとらえ、「順子ちゃんの委託時期はもとより、委託後の児童相談所の対応が適切であったかどうかに関し、疑問が残らないではない」と述べた。
判決によると、李被告は昨年十一月一日深夜から同月三日未明にかけ、自宅で四回にわたり、順子ちゃんの胸を突き飛ばし、後頭部を床に打ち付けたり、ほおを平手で殴ったりして死なせた。

◆傍聴の里親「実態分かってない」

傍聴席では、里親らが身を乗り出したり、メモを取ったりして判決に聞き入った。
小学生の里親になっている東京都内の男性(47)は「判決は非常に不満。里親の実態を知らない判決内容。誰もが李被告と同じ状況に追い込まれる可能性がある」と話した。
県内の高校生の里親女性(47)は「せめて執行猶予をつけて欲しかった。里親の責任ばかりを取り上げている。児童相談所など、相談できる施設や専門家をもっと充実させていかなければ問題は解決しない」と訴えた。

◆李被告、涙止まらず

李被告は、濃紺のトレーナーの上下で入廷し、言い渡された判決に、小さくうなずいた。判決理由が読み上げられる間、流れる涙を何度も手でぬぐい、時折、すすり泣きの声を漏らした。閉廷後、裁判長に「ありがとうございました」と頭を下げた。
李被告の弁護士は「個人的には非常に不満の残る判決。裁判官は、里親のストレスや弱さをどこまで分かっているのか。控訴については、被告とよく話し合って決める」と話した。

◆指摘受け入れ研修に力注ぐ 中央児童相談所

中央児童相談所の金子準二所長は「指摘を受け入れ、今後は、里親研修などに力を入れたい」と話した。
県児童家庭課は、順子ちゃん事件を受けて、県内の里親・里子の実態調査などを通じ、対策を取ったという。事件前は二回程度だった里親候補者と子供の面談を、「納得するまで」に変更。里子委託が始まってから最初の四か月間は、月一回の家庭訪問を行う。


2003/10/08 読売新聞
7日の宇都宮・里子虐待死事件の判決要旨=栃木

◇主文 懲役4年
◇理由 罪となるべき事実】 略
【量刑の理由】
被告は同居約一か月半ごろから、順子ちゃんが泣き出すたびに体罰をするようになり、徐々にエスカレートさせた。
体罰が夫や児童相談所に知れることを危惧(きぐ)し、相談所係員が訪問した機会にも、精神的ストレスを打ち明けることのないまま、断続的に暴行を加えた。順子ちゃんの言動に憎しみをむき出しにし、抑えきれない感情の矛先を里子に向けた。
 順子ちゃんに往復びんたして床に倒れ込んでも、なお立ち上がらせて殴打し、ふらふらになるまで続けた。情け容赦ない執ような虐待だった。
 順子ちゃんは、実の親の愛情に触れる機会のないまま、里親の手に掛かって短すぎる生涯を閉じざるを得なかった。哀れと言うほかなく、被告の刑事責任は重い。
 被告は日ごろは順子ちゃんに対し愛情を持って接し、養育のため疲労していたことも否定しがたい。被告夫婦との交流を図る外泊などの際、泣くなど拒否的反応が歴然としており、委託時期はもとより、委託後の児童相談所の対応が適切であったかどうか疑問が残る。一切の事情を最大限考慮しても、刑の執行を猶予する事案とは考えられない。


2003/10/08 毎日新聞
里子傷害致死 地裁、懲役4年判決−−「心神耗弱」退ける

 ◇里親への理解、危ぐする声も

 里子の大沼順子ちゃん(当時3歳)を殴って死なせた事件で、宇都宮地裁は7日、傷害致死罪に問われた宇都宮市日の出の主婦、李永心被告(44)に懲役4年(求刑・懲役6年)の実刑判決を言い渡した。飯渕進裁判長は「児童相談所や夫にも悩みを相談できるはずだった」と述べ、「泣きやまないことにいら立ち、暴行を加えたことに酌量の余地はない」と厳しく指摘した。
 判決で飯渕裁判長は、李被告が不安や疑問を感じた場合には家族や児童相談所にも相談できたのに1人でストレスをためこみ、暴力にエスカレートしていったことに対し「身勝手で理不尽な動機であり、自制心の欠如も看過しがたい」と述べた。また被告が暴行を夫や児童相談所から隠そうとした点や、順子ちゃんの容体が急変した際、夫に助けを求めたことなどを挙げ、弁護側の主張した心神耗弱を退けた。
 一方、里子の受け入れ前に順子ちゃんと被告らが会った際、泣くなど拒否反応を示していたことから、「児童相談所の対応に疑問が残らないではない」と指摘した。
 被告はこの日、黒いトレーナーとズボン姿で伏し目がちに法廷に現れた。飯渕裁判長が李被告に「何か言いたいことは」と問うと、出入国管理法では実刑判決が確定した場合、強制退去となることから「順子に謝罪していくためにも日本に残らせてください」と執行猶予を求めた。被告の弁護人は「人間の弱さを酌まない判決に不満を感じる。控訴は本人と相談した後、決めたい」と話した。

 約40人が座れる傍聴席は里親経験者などで満席となった。初公判からすべて傍聴してきた県里親連合会の役員を務める50代の女性は「児童相談所への相談も里子を取り返されてしまうという気持ちから、なかなかできないというのが本音」と漏らし、孤独になりがちな里親の苦悩をにじませた。
 また県南部で4人の里子を育てた経験を持つ40代女性は「児童相談所は人員も専門家も少なく、相談しても納得のいく解決法が導けなかった」と問題点を指摘。「今回の裁判では里親や福祉関係者を証人として呼ぶこともなく、あまりにも表面的だったと思う。これを機に里親への理解や制度が停滞するのではないか」と不安を口にした。【川端智子、関東晋慈】

 ◇判決要旨

 ◆罪となるべき事実 被告は、同居中の里子である大沼順子ちゃん(当時3歳)が、しばしば突然泣き出し、なかなか泣きやまないことにいらだちや憎しみを覚えていた。02年11月1日午後11時半ごろから同月3日午前1時ごろまで、宇都宮市日の出2のアパートの自宅で4度にわたり、順子ちゃんが泣き出すたび、ほおを平手で殴打し、頭を壁などに打ち付け、胸を突き飛ばして後頭部を床に打ち付けるなどの暴行を繰り返し、急性硬膜下血腫などの傷害を負わせ、同日午前2時2分ごろ、収容先の病院で死亡させた。

 ◆量刑理由 被告は順子ちゃんの実兄を既に里子として養育し、順子ちゃんも里子として引き受けた。養育に不安を感じた場合は児童相談所などに連絡し、指示を仰ぐなど里親としての責任ある対応が求められていた。
 だが、被告は順子ちゃんと同居後約1カ月半ごろから、養育に限界を感じ、順子ちゃんが泣き出すたびに体罰を加えるようになった。児童相談所係員が訪問した際も、体罰を加えなければならないほどにストレスを抱えていたことを打ち明けることはなかった。
 自己保身や利己的な考えを優先させた、身勝手かつ理不尽な動機に酌量の余地はない。犯行もほおを力任せにびんたし、何度も突き飛ばすなど苛烈(かれつ)で情け容赦のない虐待で、里親の手により、短すぎる生涯を閉じたのはあまりに哀れである。
 他方、被告は順子ちゃんに対して日ごろは愛情を持って接し、養育のため心身ともに疲労していたことも否定出来ない。また夫や児童相談所の係員に度重なる体罰の事実は隠していたが、養育上の問題性は訴えていた。
 (被告に委託する前に)乳児院の記録では、被告夫婦と交流を図る外泊の際、順子ちゃんが泣くなど拒否的反応を頻繁に示しており、委託後の児童相談所の対応が適切だったか疑問が残らないではない。(順子ちゃんに暴行後)容体が急変してからは救命に努力し、反省や後悔の念も示している。それらの事情を考慮しても、本件は刑の執行を猶予するのが相当だとは考えられない。


2003/07/29 下野新聞
宇都宮の里子虐待死 里親に懲役6年求刑
検察「養育ストレス暴力に」

 里子の大沼順子ちゃん=当時(三つ)=を殴って死亡させたとして、傷害致死罪に問われた宇都宮市日の出二丁目、韓国籍、無職李永心被告(四三)の論告求刑公判が二十八日、宇都宮地裁(飯渕進裁判長)で開かれた。検察側は「養育ストレスを(順子ちゃんへの)暴力に転化させるという最悪の手段を選択した。里親制度に与えた衝撃は計り知れない」として懲役六年を求刑した。弁護側は「日本語も出来ず孤立し、慣れない育児でノイローゼ状態にあった」などと心神耗弱を主張、執行猶予付き判決を求めた。
 論告によると、李被告は順子ちゃんがなつかず、泣きやまないことなどに腹を立て、いらだちを暴力として発散した。「逃げ出すすべもない無抵抗な被害者に、身勝手な怒りを爆発させた」と厳しく非難した。
 検察側は「子どもが駄々をこねるのは、親を頼った甘えの行動で、子どもと同じ目の高さになってはならない。決して感情的になるべきではない」と指摘。継続的に暴力を加えた李被告を「被害者に愛を与える慈母ではなく、恐怖と不安、絶望を与える存在」と断じた。
 一方、弁護側は、内向的で積極的に友人を作れず、自分で抱え込む李被告の性格を強調。「子育ての仲間がいたり、児童相談所が的確な援助の手を差し伸べていれば事件は防げた」と主張した。
 李被告は最終意見陳述で「過ちによって子どもを死に追いやり、罪悪感を感じている。本当に、本当に申し訳ない」と準備した書面を言葉を詰まらせながら読み上げた。
 起訴状によると、李被告は昨年十一月一日から同三日までの間、自宅アパートのトイレなどで、順子ちゃんを転倒させて床に後頭部を強打させたり、顔を平手で殴って頭を壁に打ち付けるなどの暴行を加え、死亡させた。


2003/07/28 毎日新聞ニュース速報
<里子虐待死>43歳主婦に懲役6年求刑 宇都宮地裁公判

 里子の女児を殴って死なせ、傷害致死罪に問われた宇都宮市日の出の主婦、李永心被告(43)の論告求刑公判が28日、宇都宮地裁(飯渕進裁判長)で開かれ、検察側は懲役6年を求刑した。検察側は「里親里子関係を解消することも容易であったのに夫や児童相談所などに相談せず、養育ストレスを募らせて暴力へ転化させ、情状酌量の余地はない。里親制度に与えた衝撃度は計り知れない」と指摘し、懲役6年を求刑した。

 起訴状によると、李被告は、里子の大沼順子ちゃん(当時3歳)が泣きやまないことなどから、昨年11月1日から3日の間、自宅で順子ちゃんの顔を平手で殴り、頭を壁にぶつけるなど暴行して死なせた。

 検察側は「里親里子は血縁関係がなく、実の親子以上に寛容の精神と無償の愛が要求される。被告は愛情を求める複雑で繊細な幼心を解せず憎しみを募らせた」と指摘。弁護側は「被告は日本語も十分にできず社会的に孤立し、慣れない育児のためノイローゼ状態で、心神耗弱状態だった」と執行猶予付き判決を求めた。【川端智子】


2003/07/28 NHKニュース速報
宇都宮の里子傷害致死 女に懲役6年求刑

 去年十一月、宇都宮市で三歳の里子の女の子に暴行して死亡させたとして傷害致死の罪に問われている女の裁判で、検察側は「里親制度に衝撃を与えた責任は大きい」として懲役六年を求刑しました。
 この事件は、去年十一月三日、宇都宮市の無職、李永心(リエイシン)被告(四十三)が、里子で三歳の大沼順子(オオヌマジュンコ)ちゃんに、暴行して死亡させたとして傷害致死の罪に問われているものです。
 宇都宮地方裁判所で開かれたきょうの裁判で検察側は「順子ちゃんが被告になつかず泣きやまないことに腹を立てて暴行を繰り返した身勝手な犯行だ」と指摘しました。
 その上で「児童相談所に悩みを相談しないまま子どもを死亡させてしまい里親制度に衝撃を与えた責任は大きい」として懲役六年を求刑しました。
 これに対して弁護側は「被告は育児の悩みを誰にも相談できず犯行当時は極度のノイローゼ状態に陥っていた」と述べ、寛大な判決を求めました。
 判決は十月七日に言い渡されます。


2003/06/12 NHKニュース速報
里親になる人たちの必修研修始まる 栃木

 去年、宇都宮市で里親が児童福祉施設から預かった女の子を死亡させたとして逮捕・起訴された事件をきっかけに、栃木県は新たに里親になる人たちに三日間の研修を義務付け、きょうから研修が始まりました。
 宇都宮市にある栃木県の中央児童相談所で開かれた研修には、親と一緒に暮らせない子どもを育てるため、今年度新たに里親に登録した人など十人が参加しました。
開講式で中央児童相談所の金子準二(カネコジュンジ)所長は「里親には自ら資質の向上に努める責任があり、研修が役立つことを期待しています」と述べました。
 栃木県は、これまでも希望者を対象に里親の研修を行ってきましたが、去年十一月、里親に預けられた当時三歳の女の子が死亡した事件をきっかけに新たに里親になる人全員に研修の受講を義務付けるとともに、内容を大きく見直しました。
 新しい研修は幼くして親と別れた子どもの心理や子育ての注意点を学ぶほか、里親の育児体験を聞いたり、児童福祉施設を訪問したりする実習を盛り込んで、期間も半日から三日に延ばしました。
 参加した里親の一人は「子育てにやりがいはあるものの不安もあります。悩みがあれば積極的に相談して一人で抱え込まないようにしたい」と話していました。


2003/03/27 下野新聞
県が里親担当を配置 新年度支援報告書まとめる

 宇都宮市で昨年十一月、里子の女児(3つ)が里親の女性(43)に殴られた事件を受けて、県は四月、中央児童相談所に常勤、非常勤の二人体制で県内全地域をカバーする専任の里親支援担当を新たに配置する。里親自身や児童相談所、乳児院など関係者で構成する県の里親支援検討班がまとめた報告書の柱の一つで、県児童家庭課は「報告書にある対策を、可能なことから順次実施していきたい」としている。
 新たに設置される支援担当は常勤の保育士、非常勤の元児童養護施設職員各一人。同じく新年度から充実させる予定の里親研修や家庭訪問を直接的に担当する。
 里親との窓口を一本化し専門性を持たせるのが狙い。同課は「これまで担当職員がひんぱんに変わるため相談しづらい、といった不満もあったが、専任職員の配置で里親とのしっかりした信頼関係が築けると思う」としている。
 研修は、里子委託前に子どもの行動とその背景などを理解する体系的研修、委託から四カ月後に育児に関する研修を、いずれも必修化する。家庭訪問の頻度も、新たな委託から四カ月後まで少なくとも月一回実施するよう充実させる。


2003/02/06 毎日新聞ニュース
<里子虐待死>起訴事実認めるが心神耗弱主張−宇都宮地裁初公判

 里子の女児を殴って死なせた傷害致死罪に問われた宇都宮市日の出の主婦、李永心被告(43)の初公判が6日、宇都宮地裁(飯渕進裁判長)であり、李被告は起訴事実を全面的に認めた。李被告の弁護人は「慣れない育児や日本での生活などによるストレスで事件当時、心神耗弱状態だった」と主張した。
 検察側の冒頭陳述によると、李被告は子供がいなかったことから、00年に栃木県に里親登録し、02年7月に大沼順子ちゃん(当時3歳)を里子として預かった。しかし、預かった当初からよく泣いたため、孫の手を使ってぶつようになった。児童福祉司が自宅を訪問した直後の同年11月1日夜、児童福祉司に順子ちゃんへの暴力が分かってしまうのではないかという緊張から疲労を感じ、同月3日未明まで、頭を壁や床に打ち付けるなどして急性硬膜下血腫(脳内出血の一種)で死なせた。【川端智子】


2002/11/26 朝日新聞 東京朝刊
里親制度 研修や支援を議論、改善を (私の視点)

 今年10月の里親月間は近年にない盛り上がりを見せた。だが、それを一気に冷やす出来事が宇都宮市で起きた。3歳の女児を里親が虐待死させた事件である。
 私は20年近く養育専任の里親をしてきた。その一人としてこの子に申し訳なく思う。里親選びの審査は十分だったか。子を預けた後の支援はどうだったか。次々と疑問がわいてくる。
 私たち里親経験者からなる市民グループは、9月下旬に児童虐待対策の先進国である米国を視察した。虐待防止と里親制度とは一見関係ないように見えるが、虐待を理由に親と子が分離されると、子どもの安全な生活場所として、養護施設か里親家庭が指定されるのである。
 2年前の児童虐待防止法の制定以来、里親制度に注目が集まっている。虐待を受けた子どもを育てるのは簡単でなく、一人一人に丁寧に向き合える環境が求められるからだ。
 里親たち自身の間でも意識変化が起きている。子どもの権利条約などの影響もあり、この制度は子どもの人生を応援する、公的役割を担った社会的な養護なのだと、各地で多くの人が気づき始めた。
 だがこれまで、里親制度はボランティア精神に富む一部の人の手に委ねられたまま、いわば社会の片隅で細々と営まれてきた。本来、大きな責任を担っている里親への研修や支援が議論されることはほとんどなかった。それが今回の悲劇の背景にあると思う。
 里親制度を本当に子どもの役に立つよう改善していくために、何をしたら良いのか。私たちの学習体験から6点提案したい。

(1)年齢や家の広さ、年収など物理的条件に傾きがちな里親登録時の審査を見直し、候補者の適性を見極められる工夫をする。周囲の人の評価を取り入れるなどの方法も有効だろう。
(2)里親候補者に、既に子どもを迎え入れている里親宅でボランテイア活動をするなど、事前に経験を積む機会を設ける。
(3)登録後も、子どもを委託した後も、里親としての力量を高めていく研修を続けて実施する。
(4)子どものためのソーシャルワーカーはもちろん、里親専任のソーシャルワーカーを置く。今でも児童相談所の福祉司が相談相手になってくれるが、専任でなく、また里親・里子を同一人物が担当するため、里親に寄り添うサポートができていない。
(5)そのためにも「虐待ケアセンター」(仮称)を作る。ソーシャルワーカーや医師、弁護士などの専門家が常駐し、いつでも相談に乗ってくれる拠点とする。
(6)里親のレスパイト(一時的な休息)制度を設ける。障害児を持つ親たちの間では既に行われている。

 以上のうち、研修とレスパイトには、厚生労働省も今春から取り組み始めた。その矢先に冒頭の事件が起き、「もっと早く手をつけていれば」と思わずにいられない。ほかにも、実の親をケアするプログラムの実践や、見えにくい心理的・性的虐待の判断方法の確立など、しなければならないことは山ほどある。
 事件を機に社会全体でこの問題を考えてほしい。そして、里親が「子どもの人権を守っている」と誇りを持てる制度にしていきたい。
(里親子支援グループ「アン基金プロジェクト」事務局長)


2002/11/23 毎日新聞 地方版/栃木
里親特有の悩み、浮き彫りに−−実親との関係/養子縁組問題/告知の時期 /栃木

 県児童家庭課は22日、宇都宮市の里子傷害致死事件を受け、県内の里親家庭58世帯を対象に行った聞き取り調査の結果を発表した。里子64人中、ほぼ半数の31人の里子に対し、何らかの悩みがあると回答した。「落ち着きがない」「反抗的」など子育てに関する悩みのほか、実親との関係や里子への告知をめぐる悩みが目立った。今後、同課職員や児童福祉司で検討班を設置し、調査結果を詳しく分析する。【川端智子】

 ◇検討班設置へ−−県全世帯調査

 調査は今月6日から13日にかけて実施し、里親全世帯が回答した。養育上の悩みでは、「反抗的」、「落ち着きがない」「乱暴な言動がある」など一般的な子育てに通じる悩みがある一方、「自虐行為がある」「不登校」など深刻な声も寄せられた。また、「実親との関係」「養子縁組に関する悩み」「告知の時期」など、里親特有の悩みも寄せられた。

 児童相談所に対しては、「里親という立場の特殊性を理解した相談体制の整備」などサポートの充実を求める意見が6件あったほか、「(児童福祉法で対象外となる)18歳以上の里子にもフォローが必要」という現行制度への不満も出た。

 里子自身の回答は8人。「学校も家庭も楽しい」(中学生)、「希望大学に合格し、喜んでいる」(高校生)という声の一方、「学校がつまらなく、お金にも困っている」(高校生)、「今後、実母の所にいくかどうか分からない」(小学生)、「人間関係がうまくいかず、学校でも友だちができにくい」(中学生)などの悩みもみられた。

 児童家庭課は「里親の多くは一般的な子育ての悩みにプラスして、里親ならではの悩みを持っていることが改めて分かった。調査を基に、そこをフォローできるような体制を作っていきたい」と話している。


2002/11/23 読売新聞 東京朝刊
宇都宮の里子虐待死 李容疑者を起訴=栃木

 宇都宮市で大沼順子ちゃん(当時三歳)が、里親から虐待を受けて死亡した事件で、宇都宮地検は二十二日、宇都宮市日の出二、主婦李永心容疑者(43)を傷害致死の罪で、宇都宮地裁に起訴した。

 起訴状によると、李容疑者は十一月一日から三日までの間、自宅で、里子の順子ちゃんの顔を殴り、頭を壁に打ちつけるなどした。順子ちゃんは三日午前二時ごろ、運ばれた病院で脳内出血で死亡した。

 李容疑者は、順子ちゃんを預かった際、夫と「厳しくしつけていこう」と話し合ったという。調べに対し、「最初は軽くたたく程度だったが、泣きやまなかったり、わがままを言い出したりしてから、徐々に強くたたくようになった」と供述。「大変申し訳ないことをしてしまった」と、深く反省しているという。

 県中央児童相談所によると、順子ちゃんが正式に里子として引き渡されたのは今年七月十二日。児童福祉司が、李容疑者宅を訪れたのは、引き渡す前の七月九日と事件二日前の十一月一日の二回だけだった。

 十一月に訪問したときは、李容疑者が「最近わがままになってきた」と話していたが、順子ちゃんの表情などから虐待があったような雰囲気は感じられなかったという。


2002/11/23 読売新聞 東京朝刊
悩み多い里親浮き彫り 宇都宮の虐待死受け、県が実態調査=栃木

◆実の親との関係や子供の情緒不安定

 宇都宮市で大沼順子ちゃん(当時三歳)が、里親から虐待を受けて死亡した事件を受け、県が行った里親と里子の実態調査の結果が二十二日、まとまった。実の親でないことを伝える時期や実母との関係など、里親が様々な悩みを抱えていることが分かった。児童相談所にも積極的なかかわりを期待する一方で、一部には必要以上のかかわりを求めないとの意見もあり、複雑な里親の心境と相談所の対応の難しさが浮き彫りになった。

◆相談所へは厳しい意見も

 県内には現在、五十八世帯の里親に、六十四人の子供が委託されている。調査は、児童相談所の児童福祉司が家庭訪問し、すべての里親と子供に面談した。

 里親の意見の中では、「落ち着きがない」「乱暴な言動がある」「自虐的行為があって心配」など、就学前の子供に関して、情緒の不安定さを心配する意見が目立った。「実の親ではないと伝えていない。医療機関にかかった際、本名を言われるので悩んでいる」(小四里親)、「いつ伝えるべきか悩んでいる」(小二里親)などの悩みもあった。

 「実母と面会させているが、今後が心配」(三歳里親)、「実母の干渉が恐ろしい」(小二里親)など実の親との関係について心配している人もいた。

 児童相談所への要望では、里親同士が情報交換できる場を求める声が上がった。「密接にかかわってほしい」「定期的に訪問してほしい」などこれまで以上のかかわりを求める声がある一方、「必要以上にかかわってほしくない」「相談所の職員は専門性に欠けており、援助ができないなら、かかわらないでほしい」という厳しい意見もあった。

 子供は六十四人中、三十三人が日常生活に問題はないと答えた。ただ、「人間関係がうまくいかず、学校でも友達ができにくい」(中二)、「今後、実母のところに行くことになるのかどうかわからない」(小五)という悩みや不安を抱える子供もいた。

 調査結果は、県児童家庭課や児童相談所などが設置を予定する検討班で分析し、今後の対応に生かす。


2002/11/20 中日新聞 夕刊
前線日記 宇都宮・里子虐待死事件「子どもへの愛情深いはず」…が裏目
周囲思い込み、支援体制も整わず


 「子どもが欲しくて引き取ったはずの里親が虐待なんてするはずがない…」。宇都宮市のアパートで三日、大沼順子ちゃん(3つ)が里親の李永心容疑者(43)に頭を殴られ、死亡した幼児虐待事件は、そんな先入観を覆す出来事だった。極めてまれなケースとはいえ、そこには里親制度の"死角"も垣間見える。(宇都宮支局・吉田通夫)

 傷害致死容疑で逮捕された李容疑者は、韓国で幼稚園の先生だった。仕事で訪韓していた日本人の夫(43)と知り合い、十四年前に結婚したが、子どもに恵まれず、夫妻は一昨年二月に栃木県に里親登録。昨年十二月、順子ちゃんの兄(4つ)を引き取り、今年七月に順子ちゃんを迎えた。

 今月一日、児童相談所の児童福祉司は、養育が順調かどうかを確かめるため家庭訪問した。李容疑者は「最近(順子ちゃんが)よく泣くので困る」と、悩みを打ち明けた。しかし、家庭の雰囲気は円満そうに見えたため、児童福祉司は「よくあることなので、気長に子育てを」とアドバイス。同容疑者は「がんばります」と答えた。事件が起きる二日前だった。

 夫は仕事に忙しく帰宅が遅かった。近所に住む義父は息子夫婦の養育方針に口を挟むまいと、あえて干渉しなかった。事件後、二人はそれぞれ「なぜ防げなかったのだろう」と悔やんでいる。

 李容疑者は日本語がたんのうではなかったためか、近所付き合いもあまりなかった。県警の調べに「泣きやまないのでかっとなってしまった」と涙ながらに話したという。順子ちゃんの体には多数のあざが残っていたが、県警は同容疑者が孤立して育児ノイローゼに陥ったとの見方を強めており「憎くて虐待したというより、しつけでたたいたようだ」との同情も聞かれる。

 行政もこの事件にショックを受けた。栃木県中央児童相談所の金子準二所長は「里親に虐待を疑うような調査はできなかった」と"盲点"だったことを率直に認める。

 児童福祉法に基づく里親制度について国は先月、初めての大掛かりな改正を実施。子育てに疲れた里親が一時的に里子から解放される「レスパイト・ケア」という支援策も設けたが、栃木県ではまだ体制が整っておらず同ケアは今回のケースには間に合わなかった。

 三人の里子を育てた経験のある同県西那須野町の女性(61)は「心身ともに疲れて暴力を振るいたくなることもある」と正直に告白する。

 出産直後に乳児院に入るなど家庭経験のない里子の場合、里親の愛情を試すために泣いたり暴れたりすることがあるという。順子ちゃんも同じ境遇だった。

 そんな順子ちゃんにうまく対処できず、次第に孤立感を深めていった李容疑者。「里親だから心配ない」。周囲のそんな思い込みや、プレッシャーが追い詰めたのかもしれない。

 (メモ)
 養育里親制度 全国の児童相談所が窓口となり、書類審査と面接で経済状況、養育計画などを調べ、各都道府県の児童福祉審議会が登録の可否を決める。登録されると、児童相談所が里子を紹介。面談や外出、外泊を繰り返し、相性が良ければ里親に委託される。厚生労働省のまとめでは、2000年度末現在、全国で登録されている里親は7403世帯。うち1699世帯が2157人の里子を預かった。里子になれる子は乳児院、児童養護施設で生活する児童の1割にも満たない。 


2002/11/15 毎日新聞 地方版/栃木
里子傷害致死事件受け、県が呼び掛け−
−藤原で定例里親大会 /栃木


 ◇「悩み相談して」

 県里親連合会は14日、藤原町で年1回定例で行われる里親大会を開き、県内の里親や行政の福祉関係者約100人が出席した。冒頭で、今月3日に里親に殴られて亡くなった大沼順子ちゃん(3)への黙とうが行われた。麻生利正・県保健福祉部長は、傷害致死容疑で逮捕された里親の宇都宮市日の出2、主婦、李永心容疑者(43)について「不安やストレスが要因の一つだったようだ。養育する中で、悩みを一人の物にしないよう、児童相談所などに相談してほしい」と呼びかけた。

 席上、麻生部長は、「児童虐待の増加に伴い、(虐待を受けた子供のケアを行う)専門里親が始まったばかり。社会で里親への期待が高まっている中での事件で、非常に残念」とあいさつした。

 また、県児童家庭課は10月から里親を、(1)従来の「養育里親」(2)三親等以内の児童を養育する「親族里親」(3)1年以内の短期間預かる「短期里親」(4)専門的な研修を受け、児童虐待などで心身に影響を受けた子供を預かる「専門里親」の四つに分類することを報告した。里親が年7日間まで、里子を児童養護施設などに預け、一時的に休息が出来る「レスパイト・ケア」制度が導入されたことも紹介された。

 出席した50代の女性は「今回の事件は里親ということばかり話題になっているが、子育てをしている親のだれもが起こす可能性のある事件。子供は親だけでなく、社会も一緒に育てているという感覚を持って、制度を充実することが必要なのではないか」と話した。【川端智子】


2002/11/15 読売新聞 東京朝刊
里子虐待死事件後、藤原で初の里親大会 参加者、ショック隠せず=栃木

◆「相談所職員少ない」 里親ら問題点を指摘

 宇都宮市で三歳の女児が里親に虐待され死亡した事件の後、初めてとなる県里親大会が十四日、藤原町のホテルで開かれた。参加した里親たちは事件にショックを隠せず、「児童相談所の職員が少ない」「職員の訪問でも家庭の本当の姿は見えない」といった問題点を指摘した。県は、傷害致死容疑で逮捕された主婦が悩みを相談できずに事件を引き起こしたとして、「気軽に相談してほしい」と呼び掛けた。

 大会は年一回開催され、今回は、里親約百三十人と県関係者らが出席。冒頭、参加者全員で亡くなった女児のために一分間の黙とうを行った。

 あいさつした麻生利正県保健福祉部長は、事件について触れ、「(逮捕された主婦は)不安やストレスを相談できず、自分で思い詰めたことが要因の一つと聞いている。悩みを一人のものとしないで気軽に相談して欲しい」と話した。

 会場で声を聞くと、里親たちは、口々に事件の衝撃を語り、児童相談所などへの要望を訴えた。

 小学生の男の子二人を育てる五十歳の女性は「児童相談所とのつながりは生命線。つながりが少しでも離れると非常に不安になる」と児童相談所の役割の大きさを訴えた。

 二歳の女の子を育てている四十九歳の女性は「身近な問題なので衝撃を受けた。児童相談所は人数も少なく、現在の訪問では里親家庭の詳しいことを把握するのは難しいと思う。訪問に来ても"お客さん"程度の付き合いになっている」と指摘する。

 三人の里子を育てた四十二歳の女性も「逮捕された主婦は、幼稚園の職員の経験もあったのでショックを受けた。児童相談所の職員は少なく、二、三年で担当が代わり、長期的な視野に立って、相談できる人がいない」と訴えた。

◆「孤立した里親」対策が課題

 里親制度は、親がいなかったり、育児を放棄してしまったりした時に、都道府県が子どもの養育を希望者に委託する。

 里親は、児童相談所から健康や経済状態、家庭環境などについて面接調査を受け、登録されるが、県里親連合会の森富男副会長(67)は「社会の偏見などもあり、実子を育てる以上にストレスがたまる」と話す。

 悩みを抱える里親のために同会は、交流会などを開いている。里親同士が情報を交換し、話し合うことで悩みの多くが解決されている。

 ただ、里親であることを周囲に知られることを嫌い、交流を避ける人もいる。逮捕された主婦も、交流会や地域の研修会に全く参加していなかった。

こうした「孤立した里親」への心のケアはこれまでも課題となっていて、国は今年十月から新たな制度を導入した。

 育てるのに疲れた場合、一時的に施設や別の里親に預けられるようになり、児童相談所に里親を専門にアドバイスする職員を設けることになった。ただ、県では予算の関係などからまだ動き出しておらず、早期の実施を目指している。

写真=黙とうをささげる参加者たち 


2002/11/13 毎日新聞ニュース速報
<里親事件>孤立深め虐待 家庭訪問の職員見逃す宇都宮

 里子の女児を殴って死なせた傷害致死容疑で逮捕された宇都宮市日の出の主婦、李永心容疑者(43)は宇都宮中央署の調べに「以前からたたいていた」と供述し、事件前、子育ての悩みを周囲に漏らしていた。だが事件2日前、県の担当職員が家庭訪問した際も事件の兆しは見逃されていた。行政の十分な支援を受けられず、孤立を深めた里親の姿が浮き彫りになってきた。

 李容疑者は自宅アパートで3日午前1時ごろ、大沼順子ちゃん(3)の顔を数回殴り、脳内出血で死なせた疑いで逮捕された。署の調べに「泣きやまないのでカッとなって殴った」と供述している。順子ちゃんの顔全体や手足には多数のあざが残っていた。韓国人の李容疑者は日本語が得意でなく、順子ちゃんに言葉が通じないいら立ちもあったとみられる。

 栃木県中央児童相談所によると、幼稚園教諭を9年間務めた李容疑者は夫と5年ほど前、韓国から引っ越してきた。子供に恵まれず、教職の経験もあることから、00年2月に里親登録され、昨年12月に男児(4)を、今年7月に妹の順子ちゃんを引き取った。

 事件後、相談所が夫に事情を聴くと、李容疑者は夫に「(順子ちゃんが)言うことを聞かない」「言葉(の発達)が遅い」と相談し、「たたいてしまった」とも話していたことが分かった。

 夫は「気長にやろう」とアドバイスしていたが、コンピューター関係の仕事で帰宅は毎晩遅かった。「(李容疑者は)家に閉じこもりがちだった」と夫の父親(71)は言う。

 厚生労働省は児童福祉司が里親家庭を随時訪問するよう指導している。だが李容疑者宅への訪問は順子ちゃんを預けた7月12日と、事件2日前の今月1日の2回だけ。1日は約1時間、里子の近況などを聴いたが、異状は見つけられなかった。相談所は「第三者の通報がない限り(虐待の跡がないか)子供の服を脱がせて調べることもできない」と説明する。

 4人の里子を育てた県内の40代の女性は当初、里子との衝突が絶えず、児童心理書などで独学して初めて原因を理解できたという。この経験から「行政は里親が学ぶ場や相談窓口を作ってフォローすべきなのに、預けっぱなしだ」と批判する。

 県は2〜3カ月に1回だった家庭訪問を月1回程度に増やす方針を決め、訪問時のガイドライン作りも検討している。 【川端智子、関東晋慈】


2002/11/12 NHKニュース速報
女児虐待死 逮捕の里親の女 しつけで以前からたたいていた

 今月三日、宇都宮市で児童福祉施設から引き取って育てていた三歳の女の子を殴って死亡させたとして、傷害致死の疑いで逮捕された里親の女は「以前からしつけのつもりでたたいていた」と供述し、警察では女の子への暴力が繰り返されていたものと見て調べています。
 この事件は今月三日、宇都宮市日の出(ヒノデ)の李永心(リエイシン)容疑者(四十三)が、里子として育てていた大沼順子(オオヌマジュンコ)ちゃん(三)を殴って死亡させたとして、傷害致死の疑いで警察に逮捕されたものです。
 警察では、順子ちゃんの全身にあざがあったことから調べたところ、李容疑者は「順子ちゃんが言うことを聞かない時には以前からしつけのつもりで手でたたいたりしていた」と供述したということです。
 李容疑者は四年前に韓国から日本に来ましたが、警察の調べに「環境の違いに悩んでいた」とも供述しているということです。
 警察では、李容疑者が子育てなどに悩んで順子ちゃんに繰り返し暴力を振るっていたものとみて、家庭と連絡をとっていた児童相談所の担当者などからも事情を聞いて詳しく調べることにしています。


2002/11/07 下野新聞 朝刊
里親の支援体制充実へ 坂口厚労相が考え示す 宇都宮の里子傷害致死

 宇都宮市で三歳の女児が里親(四三)に殴られ死亡した事件で、坂口厚生労働相は六日の衆院厚労委員会で「このような事件を防ぐのは、養育を里親だけに任せておいては難しい。児童相談所と児童施設と連携プレーをとっていかないといけない」と述べ、里親支援体制の充実を図る考えを示した。
 民主党の水島広子衆院議員の質問に答えた。水島氏が「里親が専門知識を持つのは必要だが、知識があれば一人でやっていけるというものではない。常にサポートを受けられる体制が必要だ」とただしたのに対し、坂口厚労相は「事件を聞き心痛む思いがした。」と発言。「虐待を受けた子の場合、ただ預かればいいと思っていると問題が生じる。里親制度の中身や能力が問われる時代になった」と制度の見直しを示唆した。
 厚労省の岩田喜美枝雇用均等・児童家庭局長も「里親のサポート体制は充分ではなかった」と不備を認め、児童相談所などが充分に相談に応じる体制をつくることを今後の課題に挙げた。


2002/11/06 下野新聞 朝刊
里親養育、実態調査へ−宇都宮の里子傷害致死
県、支援体制見直し


 宇都宮市の大沼順子ちゃん(三つ)が里親(四十三)に殴られ、死亡した事件を受けて、県は五日、県内の里親の養育状況を把握するため、里子を引き取っている里親全員を対象に実態調査に乗り出す方針を固めた。里親との連絡など支援体制の見直しにつなげる考えだ。
 県によると十月現在、県内には二百二十人が里親登録しており、うち、六十人が里子を受け入れている。調査対象とする里親は、里子を受け入れている六十人全員。調査は六日から開始、県児童相談所職員などが直接、里親宅を訪問し、聞き取り調査する。
 里子がどういう環境で育てられているか、里親の子育て上の悩みなどを把握する。今月中の調査完了を目指す。
 この事件をめぐっては、亡くなった大沼順子ちゃん(三つ)が里子になってから、県中央児童相談所職員が家庭訪問したのは委託日の七月十二日と事件二日前の二度だけだったことが判明、同相談所は「(容疑者になった)里親へのサポートが足らなかった」と支援体制の不備を認めている。

県内の里親からは支援不足訴える声

 宇都宮市の大沼順子ちゃん(三つ)が里親(四十三)に殴られ死亡した事件で、県内の里親たちは事件を非難する一方、「心の傷を負った子どもへの対応を学ぶ機会が無い」と児童相談所などによる支援体制の不備を指摘する声を上げている。順子ちゃんも家庭経験がまったくない子だった。事件は心の傷を抱えた子に対応しきれない里親制度の未熟さを浮き彫りにした。
 「自分への注目を求めるのか、こちらの言うことの逆手に出た」。乳児院で育った男児(三つ)を養育する西那須野町の里親鷹栖律子さん(六十一)も当初、愛着障害を感じたという。引き取って約一年後、ようやく「抱っこして」と素直に甘えるようになった。
 「泣き出したいこともあった」鷹栖さん。児童相談所の職員に「虐待するかも知れないよ」ともらしても「あり得ませんよ」ととり合ってくれない。
 「相談所はこちらが求めなければ訪問してくれない。孤立しがちな里親にとって事件は誰にでも起こり得る。周囲のサポートが必要」と訴える。
 子どもたちの心の傷をいやす里親制度への取り組みは近年、始まったばかり。厚生労働省は先月、研修を受けた里親が被虐待児を受け入れる専門里親制度をスタートさせたが、里親への研修制度は依然として不十分だ。

 県南の四十代の女性の里親は現在、専門里親の研修中。「里親は『愛情を持って育てれば何とかなる』という甘いものではない」。この女性は一九九五年に里親登録したが、公的な研修は年一回、講演会がある程度だ。
 「乳児院などにいる子は愛着障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)になっていることが多く、そういう子への対応を学ぶ必要がある。充分な訓練や支援があれば事件は防げた」と訴える。


2002/11/06 下野新聞
論説  宇都宮市の里子傷害致死 里親支援の態勢見直しを

 乳児院から七月に里子として引き取った三歳女児を殴って死亡させたとして、宇都宮市の韓国籍の主婦が傷害致死の疑いで逮捕された。女児の全身には殴るなどしてできたとみられるあざが十ヶ所以上あるため、以前から虐待があった疑いが強まっている。
 この女性は、子どもができなかったため、日本人の夫と里親になることを二〇〇一年九月、県に申請。同年十二月に女児の兄(四つ)を引き取った。女児は県中央児童相談所が「兄妹そろって生活した方が良い」として養育を持ち掛けた。
 女性は韓国で九年間、幼稚園教諭として子育ての実務経験があり、安心して子どもを委託できる里親の一人だったという。兄弟そろって家庭的な養育環境の下にという配慮が生かされなかったのは、残念なことだ。
 なぜ、こうした事態に至ったのか、県は原因を究明し、虐待防止に向け、里親への支援態勢児童相談所の体制の充実に力を入れてもらいたい。
 乳児院に預けられた子どもは、二歳までしか養育してもらえない。その後は養護施設や里親に委ねられる。しかし、養護施設は十八歳まで預かれることや児童虐待の増加等で入所児が多く県内九ヶ所の施設はほぼ満員だ。
 里親に委託する際は、父母の状況や子どもの発達状況などを考慮し、最も適合する里親が選ばれる。里親と対象児童は外泊などの試験養育期間を経て、うまく親子関係が築けるか、などを見極めた上で委託される。
 今回の女児のケースで県は「里親選びに問題はなかった。」と強調している。しかし、里親との関係を見極める際、親子関係がうまく築けるかという縦の関係を重視する余り、周囲など横との関係を見ることが手薄になった面はなかったろうか。横の関係は子育てを支援するセーフティ−ネット(安全網)にも発展してゆく可能性がある。
 この女性は児童相談所や児童福祉司には相談しなかったが、子どもがよく泣くことやいうことを聞かないことなどに悩み、殴ってしまったという。子育てのストレスが自分を追いつめ、子どもに向かってしまったようだ。
 しかし、子どもは安心できる場に行くと里親の愛情を試す独特の問題行動を起こす。里親自身にも家族にも相当の負担がかかり、里親をやめてしまう人もいる。
 核家族化が進み、地域社会との関係も希薄になっている。カウンセリングの充実など、里親に対する支援やトレーニング体制を充実させる必要がある。
 県中央児童相談所には九人の児童福祉司がいる。宇都宮市を中心に五市十八町、十九家庭の里親を担当している。県内全体の里親家庭は六十ある。里親家庭への訪問は二、三ヶ月に一回程度でそれ以外は電話でのやりとりが主になるという。
 今回のケースで児童福祉司がこの女性宅を訪問したのは、女児が預けられた七月中旬と事件直前の計二回だった。
 専門家による支援態勢が手薄な背景には、専門職が少なく、児童虐待や非行などの増加に対応しきれないことや、里親は養育よりも養子縁組を希望するケースが多く、養子縁組が成立した後まで公的機関の支援を好まない傾向などがあるからだ。
 児童福祉の専門家は県全体で児童福祉司がわずか二十人。心理判定員は十人だ。専門職が容易に増えないのは欠員補充という原則があるためだ。しかし、県は少子化時代を迎え、子育てに力を入れると標ぼうしている。専門家の確保にも、もっと柔軟に対応してもらいたい。


2002/11/05 毎日新聞 地方版/栃木
里子傷害致死 児童福祉司の家庭訪問、回数増やす方針/栃木

 里子として預かっていた大沼順子ちゃん(3)を殴って死亡させた傷害致死容疑で、里親の宇都宮市日の出2、無職、李永心容疑者(43)が逮捕された事件で、県中央児童相談所の金子準二所長は4日、事件の再発防止のため、今後、早急に児童福祉司による里親家庭の訪問回数を増やす方針を明らかにした。委託直後の家庭を重点的に、訪問回数を1カ月に1回程度に増やし、電話連絡をまめに取るよう指導する。【川端智子】

 ◇中央児童相談所、委託直後重点に

 同相談所には9人の児童福祉司がおり、宇都宮市を中心に5市18町、19家庭の里親を担当している。里親家庭への訪問は2〜3カ月に1回程度で、それ以外は電話でのやりとりが主だという。

 今回の事件前、児童福祉司が李容疑者の自宅を訪問したのは、順子ちゃんが預けられた7月12日と、事件直前の今月1日の計2回。児童福祉司はこの間、月に1、2回程度、電話で連絡を取った。順子ちゃんの住民票や行政への書類の提出を求めたほか、家庭での様子を簡単に尋ねただけだった。一方、李容疑者からの電話も書類の記入方法に関する質問程度だったという。

 厚生労働省は児童福祉司による里親家庭の訪問について、随時行うよう指導しているが、回数や頻度などは規定していない。金子所長は「里親と頻繁に接触することで、相談所との距離を近くすることが必要だ。環境に慣れるまでの段階が一番トラブルが起きやすい。相談をしてこない家庭にも連絡をまめに取れば、トラブルの兆候なども事前に察知でき、問題が顕在化するのではないか」と話している。

 県内では10月現在、220家庭が里親として登録され、うち60家庭で68人の里子が養育されている。

 ◇李容疑者を送検

 宇都宮中央署は4日、傷害致死の疑いで李容疑者の身柄を宇都宮地検に送検した。
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 ◇より手厚い支援必要−−金子所長に聞く

 金子準二・県中央児童相談所長に、事件前の李容疑者の家庭内の様子や行政の課題を聞いた。

 ◆事件2日前の訪問では、どんな様子だったのか

 1日の午後8時から、1時間程度行われた。担当者によると、(李容疑者、43歳の夫、順子ちゃん、4歳の兄)4人の一家団らんという感じだった。仲良くパズルをしたり、歌も歌うなど和やかな雰囲気だった。(李容疑者は担当者に対し)「3カ月たって、甘えるようになってきた」と報告していた。「最終的には2人と養子縁組をしたい」とも言っていた。

 ◆順子ちゃんの体には多数のあざがあったという。体のチェックはしなかったのか

 里親制度は行政と里親の信頼関係が大事。第三者から児童相談所に「児童虐待の可能性がある」といった通告がなければ、子供に服を脱がせ、調べることはできない。担当者は順子ちゃんの顔や手足など、見えるところにあざなどはなかったと話している。

 ◆相談などはなかったのか

 相談所や児童福祉司にはなかった。事件発生後、家族に事情を聴いたら、夫には「よく泣く」「言うことを聞かない」「他の3歳児に比べて言葉(の発達)が遅い」などと相談していたほか、(順子ちゃんを)「たたいてしまった」と話していたという。夫は軽くやったと思い、「気長にやろう」とアドバイスしていたと話していた。

 ◆里親選びに問題はなかったのか

 なかったと思っている。韓国で9年間、保母として経験があり、里親制度にも理解を示していた。安心できる里親の1人だった。「なぜ、こんなことになってしまったのか」と今でもショックだ。ただ「(李容疑者から)援助を求められなかったから、行政は何も出来なかった」で済まされる問題ではない。今後は児童福祉司の増員も含め、里親へのより手厚い支援が必要だと思っている。


2002/11/04 東京新聞 栃木版
里親の児童虐待死事件 相談所関係者に衝撃
2日前訪問、悲劇見抜けず


 里親が里子に暴行し、死なせてしまった異例の児童虐待事件。県中央児童相談所は事件が起きる二日前の一日、月に一度の定期家庭訪問で○○○○さん(43)=宇都宮市日の出二=方を訪れ、李永心容疑者(43)、大沼順子ちゃん(3つ)、順子ちゃんの兄(4つ)と面談したばかりだった。「『円満にいっている』との報告だったが…」。以前から虐待を受けたとみられる順子ちゃんの悲劇を見抜けなかったことに、関係者は衝撃を受けている。
 県中央児童相談所によると、一九九八年十月末のまとめで、県内の里親登録数は二百二十世帯。このうち里子を受け入れているのが六十世帯で、里子は計六十八人。
 里親登録の申請があった場合、児童相談所の職員が家庭に出向いて両親と面談して養育方針などを聞き、問題がなければ県の児童福祉審議会に諮られ登録が決まる。両親に高齢や病気などの欠格理由がない限り、申請はほぼ通る。登録後は、両親の要望を基に児童相談所が里子を紹介し、相性を見極めたうえ委託、月に一度の家庭訪問や電話などで近況を調べる。
 ○○さん夫妻の場合、まず、宇都宮市内の民間乳児院で順子ちゃんの兄と一緒に遊んだり、○○さん宅にホームステイさせた結果、「相性がいい」と判断し、兄は同年十二月に里子になった。
 同相談所は当初から「できれば、兄と妹を二人とも引き受けてほしい」と要望し、○○さんも受け入れる意思を示していたといい、○○さん夫妻の負担を軽くするため、順子ちゃんは兄に七カ月遅れて里子に出された。
 同相談所は「順子ちゃんについても、基本的に手続きは同じで、○○さんとの相性は良かった」と説明するが、李容疑者による虐待は、後から里子になった順子ちゃんだけに向けられていた。
 宇都宮中央署の調べでは、兄に虐待の傷あとがない一方、順子ちゃんの遺体には、全身にわたって、古いのも含めて十カ所以上のあざが確認された。


2002/11/04 朝日新聞 栃木版
児童相談所、訪問気づかず 里子虐待死

 宇都宮市で3日、3歳の女の子が里親の女に頭を殴られて死亡した。県警によると、遺体には以前からのものとみられる多数のアザがあり、継続的に虐待が加えられていた疑いが強いという。里親の窓口になった県中央児童相談所は死亡の2日前に家庭訪問をしたが、異変には気づかなかったという。

 死亡したのは大沼順子ちゃん(3)。傷害致死の疑いで宇都宮中央署が緊急逮捕したのは里親の主婦、李永心容疑者(43)。

 順子ちゃんが里子として迎えられたのは今年7月。その後の養育状況は県中央児童相談所が把握することになっていたが、直接家庭訪問をしたのは2回だけで、それ以外は電話で近況を聞くのが主だったという。
 同相談所によると、2回目に家庭訪問をしたのは順子ちゃんが死亡する2日前の1日。担当職員が午後8時から約1時間、容疑者宅を訪ねた。順子ちゃんは容疑者のひざに乗るなど養母になじんでいる様子で、外に見える部分ではアザも見あたらず、異変はうかがえなかったという。
 同相談所によると、容疑者と夫の間には子どもがいなかった。容疑者らはまず昨年末に順子ちゃんの兄(4)を里子として受け入れ、さらに同相談所の勧めで順子ちゃんも迎えたという。
 容疑者に里親の適性があったかどうかについて、金子準二所長は「きちんと事前審査をしており、問題はなかったと思う」とした。しかし、一方で「ほかの児童虐待の対応などで里子のサポートが十分でなかった」とも話し、不備を認めた。
 李容疑者の夫の父によると、容疑者と夫は韓国で7〜8年前に結婚し、5年ほど前から夫の実家がある宇都宮に住むようになった。義父は「(容疑者は)しつけに厳しかったが、手を出すことはなかったと思う」と話す。容疑者は順子ちゃんを可愛がっている様子で、育児の悩みを訴えることもなかったという。

 里親制度は施設に預けられている子どもを希望者が一定期間引き取って育てるもので、里親の希望者は事前に登録をしておかねばならない。熱意や経済状況、家庭環境、性格などの観点で市町村の福祉事務所と県児童相談所が審査し、さらに県児童福祉審議会が承認を与える。李容疑者も同じ手続きを受けたという。 


2002/11/04 毎日新聞 東京朝刊
里子の女児、殴り死なす 容疑の女逮捕、国の制度で引き取り−−宇都宮

 栃木県警宇都宮中央署は3日、里子として預かっていた3歳女児を殴って死亡させた傷害致死容疑で、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職、李永心容疑者(43)を緊急逮捕した。県によると、李容疑者は国の里親制度に基づく「養育里親」として乳児院から女児を引き取っていた。女児の体に多数のあざがあり、同署は李容疑者が以前から虐待していた疑いもあるとみている。

 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅居間で、里子の大沼順子ちゃんの顔などを手で数回殴り、死亡させた疑い。別室にいた李容疑者の夫(43)が泣き声や物音で駆け付けると、順子ちゃんがぐったりしていた。病院へ運ばれたが、同午前2時ごろ、死亡が確認された。死因は脳内出血。

 調べに対し、李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」などと供述しているという。

 李容疑者は99年9月、県に里親申請し、00年2月に登録された。乳児院から昨年12月に男児(4)を、今年7月に妹の順子ちゃんを引き取り、この2人と日本人の夫の4人暮らし。兄のほうに虐待の跡は見られないが、県中央児童相談所は一時保護した。同相談所によると、李容疑者は里親申請の際、ゆくゆくは養子縁組したいとの希望を伝えていた。

 埼玉県内でも94年、里親が同様の容疑で逮捕された。【川端智子、関東晋慈】

 ◇「虐待専門」新設の矢先

 国は今年度、虐待で傷ついた子供を専門家が引き受ける「専門里親」を新設、制度普及を目指す検討会も今月中につくろうとしていた矢先だけに「非常に残念で、戸惑っている」(厚労省の唐沢剛家庭福祉課長)と事件にショックを受けている。

 里親制度は児童福祉法に基づき1948年にできた。全国では7403人が里親に登録され、うち1699人の元に2157人の子供が預けられている(00年現在)。里親には国から月2万9000円が支給される。

 都道府県の福祉事務所や児童相談所は里親希望者から申請があると、家庭環境や経済状況を聞き取り、問題がなければ知事が登録する。栃木県中央児童相談所は「(李容疑者は)韓国で保母など教育関係の仕事をしていたと聞き、安心して預けていた」と話す。


2002/11/04 毎日新聞 地方版/栃木
里子傷害致死 また幼い命が… 「泣きやまないので腹立った」 /栃木

 また幼い命が奪われた――。3日、宇都宮市日の出2の自宅で、里親の無職、李永心容疑者(43)が里子の大沼順子ちゃん(3)を殴って死亡させた傷害致死容疑で逮捕された。順子ちゃんは、7月に引き取られたばかり。順子ちゃんをはぐくむはずだった「家庭」で一体何が起きたのか。李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」と供述。順子ちゃんの体には多数のあざも見つかり、宇都宮中央署は虐待された疑いもあるとみている。

 李容疑者の家族の知人によると、李容疑者は10年以上前、仕事の関係で渡韓していた夫と知り合って結婚。当初は夫婦で韓国に住んでいたが、8年ほど前に夫の実家に近い、現在の自宅に引っ越してきた。日本語があまり上手でなかったせいか、近所付き合いはほとんどなかったという。

 里親登録の際、李容疑者から聞き取り調査を行った県中央児童相談所は「調査した職員の話では、(李容疑者は)教育熱心で里親制度にも理解を示していたと聞いている。安心して預けられる里親だったと思っていた」と驚いた様子で話した。

 近所の女性(25)は「男の子とお父さんが一緒に出かける姿をよく見かけた。身近なところで、こんなむごい事件が起きるなんて…」とくちびるを震わせていた。【川端智子、関東晋慈】


2002/11/04 朝日新聞 東京朝刊
3歳殴り死なせた疑い 宇都宮、里親の主婦を逮捕

 乳児院から里子として引き取った女の子(3)を殴り死なせたとして、栃木県警宇都宮中央署は3日、宇都宮市日の出2丁目、韓国籍の主婦李永心(リエイシン)容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕した。李容疑者は「泣きやまないので腹が立った」と供述しているという。県警では、女の子の全身にアザがあることから、以前から虐待があった可能性があるとみて調べている。

 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅のアパートで、7月に宇都宮市内の乳児院から引き取った大沼順子ちゃんの頭を素手で数回殴り、約1時間後に死亡させた疑い。夫が119番し、順子ちゃんを病院に運んだ。不審に思った病院から県警に通報があった。

 死因は外傷性の急性硬膜下血腫。暴行によるものとみられ、遺体の腕や脚などには多数の古いアザがあった。県警は、李容疑者が虐待を繰り返していたとみて調べている。

 順子ちゃんを李容疑者に養育委託した県中央児童相談所によると、委託した7月以来の家庭訪問を1日にしたときは円満そうだったという。李容疑者は日本人の夫(43)と01年9月、「子どもが出来なかったから」と里親になることを県に申請。同年12月に順子ちゃんの兄(4)を引き取った。

 同相談所は今年3月、「兄と妹そろって生活した方がよい」と考え、李容疑者夫婦に順子ちゃんの養育を持ち掛けた。夫婦は将来、兄妹を養子にする意向だったという。

 同児童相談所の金子準二所長は「近況報告は電話が多かった。家庭訪問の回数が多ければ異変に気づけたかもしれない。里子のサポート態勢を見直したい」と話した。


2002/11/03 読売新聞ニュース速報
虐待の母?宇都宮で里子の女児殴り死なす

 栃木県警宇都宮中央署は3日、3歳の里子の女児を殴って死なせたとして、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職李永心容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕した。同署では女児の全身に多数のアザがあったことから、李容疑者が日ごろから女児を虐待していた可能性があるとみて調べを進めている。
 調べによると李容疑者は3日午前1時ごろ、里子の大沼順子ちゃん(3)の顔などを手で数回殴り、死なせた疑い。李容疑者の会社員の夫(43)が様子がおかしいのに気付き、救急車を呼んで、ぐったりしている順子ちゃんを同市内の病院に運んだが約1時間後に死亡したという。
 李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」と供述している。
 順子ちゃんは今年7月、同市内の乳児院から里子として引き取られ同容疑者に育てられていた。李容疑者は夫(43)、長男(4)と亡くなった順子ちゃんの4人暮らし。


2002/11/03 朝日新聞ニュース速報
里子殴り死なせた疑い、女性逮捕 「泣きやまないので」

 乳児院から里子として引き取った女の子(3)を殴り死なせたとして、栃木県警宇都宮中央署は3日、宇都宮市日の出2丁目、韓国籍の主婦李永心(リ・エイ・シン)容疑者(43)を傷害致死の疑いで緊急逮捕した。李容疑者は「泣きやまないので腹が立った」と供述しているという。県警では、女の子の全身にアザがあることから、以前から虐待があった可能性があるとみて調べている。
 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅のアパートで、7月に宇都宮市内の乳児院から引き取った大沼順子ちゃんの頭を素手で数回殴り、約1時間後に死亡させた疑い。家にいた夫が119番し、順子ちゃんを病院に運んだ。不審に思った病院から、県警に通報があった。
 死因は外傷性の急性硬膜下血腫。暴行によるものとみられ、遺体の腕や脚などには多数の古いアザがあった。県警は、李容疑者が虐待を繰り返していたとみて調べている。
 順子ちゃんを李容疑者に養育委託した県中央児童相談所によると、委託した7月以来の家庭訪問を1日にしたときは円満そうだったという。李容疑者は日本人の夫(43)と01年9月、「子どもが出来なかったから」と里親になることを県に申請。同年12月に順子ちゃんの兄(4)を引き取った。
 同相談所は今年3月、「兄と妹そろって生活した方がよい」と考え、李容疑者夫婦に順子ちゃんの養育を持ち掛けた。順子ちゃんが夫婦と面会したり、自宅に短期宿泊したりして養育が可能か調査。7月12日に養育委託した。夫婦は将来、兄妹を養子にする意向だったという。
 同児童相談所の金子準二所長は「近況報告は電話が多かった。家庭訪問の回数が多ければ異変に気づけたかもしれない。里子のサポート態勢を見直したい」と話した。


2002/11/03 毎日新聞ニュース速報
<女児虐待>3歳里子を殴り死亡させた韓国籍の女逮捕 栃木

 栃木県警宇都宮中央署は3日、里子として預かっていた3歳女児を殴って死亡させた傷害致死容疑で、韓国籍の宇都宮市日の出2、無職、李永心容疑者(43)を緊急逮捕した。県によると、李容疑者は国の里親制度に基づく「養育里親」として乳児院から女児を引き取っていた。女児の体に多数のあざがあり、同署は李容疑者が以前から虐待していた疑いもあるとみている。厚生労働省は「預かった子供を里親が虐待死させたことなど聞いたことがない」と話している。

 調べでは、李容疑者は3日午前1時ごろ、自宅居間で、里子の大沼順子ちゃんの顔などを手で数回殴り、死亡させた疑い。別室にいた李容疑者の夫(43)が子供の泣き声や物音で駆け付けると、順子ちゃんがぐったりしていた。夫の119番で病院へ運ばれたが、同午前2時ごろ、死亡が確認された。死因は脳内出血。

 調べに対し、李容疑者は「泣きやまないので腹が立って殴った」などと供述しているという。

 李容疑者は99年9月、県に里親申請し、00年2月に登録された。宇都宮市内の乳児院から里子として昨年12月に男児(4)を、今年7月に順子ちゃんを引き取っており、この2人と日本人の夫の4人暮らし。男児には虐待の跡は見つかっていないが、県中央児童相談所は一時保護を検討している。 【川端智子、関東晋慈】

 里親制度普及を目指す検討会設置の矢先に……

 養育里親制度は、死別や経済的理由などで家庭環境を奪われた子供を一般家庭で保護、援助するため、児童福祉法に基づき1948年の厚生省(当時)通達でできた。国は今年度、虐待で傷ついた子供を専門家が引き受ける「専門里親」制度も新設。里親制度普及を目指す検討会を今月中に作ろうとしていた矢先だった。

 栃木県中央児童相談所によると、都道府県の福祉事務所や児童相談所は里親希望者から申請があると、家庭環境や経済状況を聞き取り、問題がなければ児童福祉審議会を経て知事が登録する。李容疑者について県中央児童相談所は「調査で問題はなかった。韓国で保母など教育関係の仕事をしていたと聞き、安心して預けていた」と話す。

 厚労省の唐沢剛家庭福祉課長は「非常に残念で戸惑っている。栃木県を通じて詳細に調査し、二度とこのようなことが起きないような方策を考えたい」と話す。全国では7403人が里親に登録され、うち1699人の元に2157人の子供が預けられている(00年現在)。里親には国から月2万9000円が支給される。

 石川守・東京都児童相談センター養育家庭支援担当課長の話 生活を始めてみて、予想もしていなかったストレスを里親も子も感じることはある。そのため、児童相談所は里親に委託後も児童福祉士が家庭訪問したり、電話するなどフォローアップするのが普通だ。担当者がどう応対していたのか。国も積極的に里親制度を活用していこうとしている時期だけに残念で悲しい事件だ。 


2002/11/03 下野新聞
3歳女児殴り死なせる 宇都宮の里親の女を逮捕

 宇都宮中央署は三日、里親になり育てていた女児を殴り死なせたとして傷害致死の疑いで宇都宮市日の出二丁目、韓国籍の無職女性・李永心容疑者(43)を逮捕した。
 調べによると、李容疑者は三日午前一時ごろ、宇都宮市の民間乳児院から引き取った大沼順子ちゃん(3つ)が泣きやまないことに腹を立て、自宅で顔などを手で数回殴り死なせた疑い。
 順子ちゃんがぐったりしたことから、日本人の夫(43)が救急車を呼び病院に運んだが、間もなく死亡した。順子ちゃんの全身にあざがあったことから、同署は、李容疑者が以前から虐待を繰り返していたとみている。
 李容疑者は、夫と順子ちゃん、順子ちゃんより先に里子として引き取った男児(4つ)の四人暮らし。
 栃木県中央児童相談所は、男児を一時的に保護する方針を決めるとともに、順子ちゃんが七月に引き取られた経緯などを調べている。