from 02/9/25 カウンタ

親が育てられない子どもたちの
尊厳を守ってください


 日本には、親と一緒に暮らすことができない子どもが36,836人(平成20年3月末)います。その多くは、児童養護施設・乳児院で集団生活をしていますが、9.9%にあたる3,633人が2582の里親家庭で暮らしています。⇒都道府県市の社会的養護の状況(平成19年度末 H20/3)

 児童福祉法第27条3に、里親とは「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を養育することを希望する者であって、都道府県知事が、適当と認める者をいう。」とあります。
 
 私たち里親は、家庭で育つことができない子どもは、児童養護施設の集団生活ではなく、地域の家庭で育つべきであるとの思いから、私たちの家庭に子どもを受け入れています。自分だけに向けられる愛情を知らず、自分だけの大人を持たない子どもたちが、1人でも減ることを願い、里親になりました。
 親に捨てられた子どももいます。実親から虐待を受けた子どももいます。親が心の病にかかり育てられない子どももいます。親が服役中の子どももいます。親の生活が安定せず一緒に暮らせない子どももいます。実親と暮らせない理由は、それぞれの子どもによって違います。
 ただ、どの子どもにも共通しているのは、実親との別離により、心に深い傷を負っていることです。
 私たち里親は、子どもの傷を癒すことはできません。ただ、子どもの傷に寄り添い、そばにいるだけです。日々の暮らしの中で、共に笑い、泣き、楽しみ、怒り、さまざまな気持ちを共有し、同じ時を過ごし、育っていきます。
 子どもが育っていく中で、多くの里親は子どもに「生みの親でないこと」「生みの親は別にいること」「それでも私たちは家族であること」「あなたをとても大切に思っていること」などを伝えます。この「真実告知」により、子どもたちは自分の出自を知っていきます。
 私たちは、子どもが自分の過去を受け容れ、たくましく育つように、時に励まし、抱きしめ、懸命な思いで育てます。36,836人の子どもたちには、36,836のドラマがあります。
 
 さて、世の中には、この里親制度があまり知られていないこともあり、ペットの飼い主を「里親」、ペットを「里子」と呼ぶ方たちがいます。「○○ペット里親会」「犬の里親募集」「猫の里親募集」などと、ホームページに案内を載せる方々がいます。さらに、公共機関で「動物の里親制度」や「公園の里親」「道路の里親」と称して、飼い主や管理ボランティアを募集する例もあります。これを受けて、新聞やテレビなどのマスコミも、動物の新しい飼い主を「里親」と呼ぶことに抵抗がありません。
 これら、「里親」「里子」の誤使用は膨大な数となり、「里親」といえば、ペットの飼い主のことだと誤解する方も少なくありません。
 
 里親家庭で暮らす子どもたちが、ホームページや広報で、「ペットの里親募集」という言葉を見たとき、どんな気持ちになるでしょうか。「自分はペットと同じように、この家にもらわれて来たのだろうか」「自分はペットと同じなのだろうか」などと、いろいろ考えます。
 実親との別離という傷を抱えながら、それを受け容れ、懸命に生きている子どもたちにとり、「ペットの里親」「公共施設の里親」などいう言葉は、あまりに無神経であり、傷口に塩をすり込まれた気持ちになるのではないでしょうか。

 人間を「1匹、2匹」と数えないように、動物を「1人、2人」と数えないように、人間にだけ使う言葉というものが歴然と存在します。「里親」「里子」という言葉を人間以外のものに使うことは、里親とその家庭で暮らす子どもたちの、人間としての尊厳を傷つけるものです。どうか、里親家庭で暮らす子どもの尊厳を守るためにも、人間以外のものに「里親」「里子」を使うことをお控えください。


 なお、動物愛護を否定しているわけでは決してありません。我が家にも、拾ってきた猫がいました。23年もの間大切に育て、2008年の夏、寿命を全うしました。子どもたちはペットを大変可愛がっていましたので、その死を嘆き悲しみ、今も写真を大切に飾っています。どうか、動物愛護に反対しての言動と誤解なきようお願い致します。

 里親制度は、それを必要とする子どもたちのための制度です。里親家庭で暮らす子ども、乳児院・児童養護施設から里親家庭へ行く子どもたちのためにも、社会全体での里親制度の理解と応援をお願いしたいです。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。


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