10.里親制度についての認知・関心

 里親制度についての認知・関心は、児童養護施設、乳児院共に、施設長の方が職員より里親制度に関する認知や関心が高い傾向が同様に見られました。「平成14年度の里親制度の改正」は、「非常によく知っている」「ある程度知っている」を合わせて89.2%、「欧米では施設養護より里親委託が普及している」は93.7%と、いずれも高い数値を示しました。乳児院でも、前者が94.6%、後者が91.4%と同じように高い数値でした。


 施設と里親のパートナーシップ(協力関係)については、養護施設が「非常に必要だ(42.6%)」「ある程度必要だ(46.3%)」と合わせて88.9%、乳児院が「非常に必要だ(51.6%)」「ある程度必要だ(39.8%)」と合わせて91.4%と、いずれも高い数値でした。

 施設と里親がパートナーシップを結ぶメリットは、養護施設は、「児童の家庭生活体験(64.9%)」「里親促進による児童のパーマネンシー保障(21.9%)」の数字から、施設養護を補完する週末・季節里親への役割を求めている印象を受けました。乳児院では、「児童の家庭生活体験(40.3%)」「里親促進による児童のパーマネンシー保障(39.8%)」と、パーマネンシー保障がメリットとして養護施設より高い数値を示しているのが対照的です。(註:パーマネンシー…永続的信頼関係)

 里親への要望は、養護施設では「ある(28.2%)」「ない(25.8%)」、乳児院では「ある(44.1%)」「ない(14.0%)」と、乳児院のほうが里親への要望が高いのが特徴的でした。主な内容は、「養育里親の増加・開拓」「被虐待児の学習・理解」「里親としての専門性の向上」「子どもへの過干渉・過度な期待をしない」「普通の生活をさせて欲しい」でした。
 中には、「年長児の里親が必要だ」との意見もありますが、「児童養護施設入所児童等調査結果の概要(平成15年2月1日厚生労働省調査)」によると、入所時・委託児の児童の年齢は、15歳(里親2.1%、施設1.6%)、16歳(里親1.4%、施設0.5%)、17歳(里親0.7%、施設0.2%)と、比率にすると若干ですが、施設より里親のほうが高齢児を受けている率が高いです。または、施設児童の自立準備としての役割を、里親に求めているのかも知れません。

 「里親委託が普及することが児童の最善の利益につながると思うか」については、養護施設が「おもう(47.7%)」「思わない(2.0%)」「どちらともいえない(46.7%)」、乳児院が「おもう(48.9%)」「思わない(3.2%)」「どちらともいえない(44.1%)」と、ほぼ同じ傾向を示しました。公式回答であるため、「思わない」が極端に少なく、「どちらともいえない」という数字の中に、施設の戸惑いが感じられます。「どちらともいえない」理由については聞かなかったとのことで、是非とも、聞いて欲しかった項目でした。
 いずれにせよ、アンケートの回答数の半数近い養護施設・乳児院が「里親委託を児童の最善の利益」と考えていることは、嬉しいと思う反面、残り半数の施設に対する里親制度の理解を求めていく必要を感じました。


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