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埼玉県議会 里親ウォッチング

2002/4/2 update

平成8年6月以降の埼玉県議会及び委員会の議事録より抜粋
埼玉県議会HP

平成13年6月
定例会一般質問
渡辺千代子(歩みの会・民主)
児童虐待について
 連日のように報道される児童虐待事件、昨年11月、児童虐待防止法が施行され、児童相談所の調査活動や子どもの保護を促すための権限が強化されたわけですが、その後も悲惨な事件が後を絶たず、今年も3月までに、全国で16人もの幼い命が犠牲になりました。
 しかも、児童相談所が住民等から通報を受けながら、対応し切れずに犠牲者を出すケースが目立ちます。「殺さないで」という、子どもの叫びが胸に迫ってまいります。
 被虐待児の命を守る児童相談所はどうなっているのか、対応がスムーズにいかないのはなぜか。埼玉県では、これ以上犠牲者を出してはいけないという強い思いから、先日、本県の児相の中核をなす上尾の児童相談所を視察してまいりました。
 御存じのように、少子化現象で、平成7年以降、県内の子どもの数は毎年減少しているにもかかわらず、虐待相談は、平成10年、369件が、平成12年は、1,186件と、驚異的な伸びを見せ、虐待防止法施行後の昨年12月から今年3月の4か月間で、497件に上っています。
 虐待相談は、3.2倍にも膨れ上がっている現状でありますが、対して、職員体制はどのようになされているのか、まずこの点についてお伺いをいたします。
 また、虐待の内容を見てみますと、身体的暴行や、食事を与えなかったり、保護、育児を怠るなどのいわゆるネグレクトが大半を占めています。そして、実父母の虐待が、9割近くにも及んでいるという実態が確認されました。
 子育てに悩み、つまずき、虐待に走ってしまう親の姿が浮かび上がります。併せて、家族や社会の中で子どもを受け止める力不足も、虐待を引き起こす原因だと考えます。
 さて、先ほども述べましたが、子どもの命を救い、虐待防止のキーワードを握っているのは、児童相談所です。何よりもまず、児相の強化が必要だと思います。子どもを生命の危険から守るため、通報からの速やかな対応が必要だと思いますが、この点についてお伺いをいたします。
 次に、被虐待児に対しては、まず保護者から引き離す必要があるわけですが、現在、一時保護を実施しているのは、県内6か所の児相のうち、中央と所沢の2か所のみです。
 中央につきましては、今年度改修により10名の定員増が図られましたが、まだまだ不足しているのが現状です。
 また、児童相談所の受皿となっている児童養護施設ですが、県内の17施設は定員いっぱいで、結果として、児相に長期間とどまっていざるを得ないのが実情となっています。
 さらに、少年非行に対応している児童自立支援施設についても、数か月先でないと入所できない実態があります。早急に児相の一時保護体制を整備すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、再発防止対策として、子育て支援、虐待により心理的障害を受けた児童の治療体制の整備、児相と保健所、病院、警察との連携、そして、各児相が情報を共有し、適切な対応を可能にするための調整機関の設置等が考えられるわけですが、いかがでしょうか。
 最後に、里親制度についてお伺いいたします。
 家庭での生活が困難な児童の健全な育成、発達や自立を援助する上で、里親家庭での養育は非常に有効です。しかし、現在里親を希望している方々が、年々減少しているのが実態です。
 私は、施設整備と併せて、要保護児童施策としての里親制度を推進する必要があると考えます。ノーマライゼーション、児童の権利擁護の面からも、脱施設化を目指して制度の問題点を整理し、新しい時代に合った里親制度の充実を強く望みますが、埼玉県での取組についてお伺いをいたします。
 以上につきまして、健康福祉部長より御答弁をよろしくお願いいたします。

井上 晶子健康福祉部長
 児童虐待は、子どもの心身の発達に重大な影響を与えるばかりか、命までも脅かす、あってはならない行為でございますところから、知事自らが先頭に立っていただきまして、700万人県民で取り組む児童虐待防止対策を展開しておるところでございます。
 まず、児童相談所の職員体制についてでございますが、急増する児童虐待相談に迅速かつ的確に対応するために、平成12年度には、児童福祉司を10名、平成13年度には、児童福祉司をはじめ、ホーム担当専任職員や児童指導員、保育士など、17名を増員することによって、職員体制の強化に努めたところでございます。
 次に、通報からの速やかな対応についてでございますが、虐待の情報があった場合には、迅速かつ適切な対応が重要であるとの認識の下、緊急の場合は即時に、緊急性が薄いと思われる場合においても、48時間以内には、子どもの状況を実際に確認することとしているところでございます。
 次に、児童相談所の一時保護体制の整備についてでございますが、児童虐待相談件数の増加に伴いまして、保護が必要な児童も増えておりますことから、一時保護所の入所率も高くなってきております。
 こうした現状を改善するためには、まず、児童の受皿となる、児童養護施設などの受入れ枠の拡大が必要であると考えておりまして、少人数で家庭的な処遇を行う地域小規模児童養護施設や新たな民間児童養護施設の整備、既存施設の定員拡大など、多様な方策を駆使し、適切な対応をしてまいりたいと存じます。
 次に、再発防止対策についてでございますが、子育て支援の強化や児童の治療体制、あるいは関係機関の連携など、御指摘のございました点は、児童虐待が再び繰り返されないようにするための方策として、いずれも欠くことのできないものと認識いたしております。
 このため、現在、虐待のリスクのある保護者や、虐待を受けて施設に保護された児童を対象とし、臨床心理士などによる心のケアに取り組んでいるところでございます。
 また、関係機関が連携して、児童虐待に対応するためのネットワークの構築に努めますとともに、本年度からは、こうしたネットワークの強化に向け、各児童相談所に虐待対応コーディネート担当を配置し、連絡調整機能の整備を図ったところでございます。
 次に、里親制度の推進についてでございますが、児童を温かい愛情と理解の下に、家庭の中で養育する里親制度は、虐待を受けた子どもの心の回復にとって、大きな役割を有するものと考えております。
 しかし、実際には、里親が年々減少している現状にありますことから、新たな里親を開拓するために、広報啓発活動や研修会など行っておりますほか、財政的支援として、入園・入学奨学費などの県独自の補助制度を実施しているところでございます。
 保護を必要とする児童が増加する中で、里親の必要性は、今後ますます高まるものと考えられますところから、引き続き、里親の開拓のため、努力を重ねてまいりたいと存じます。

2002/4/2 sido